1. 事件発覚、迫真の記者会見はこうして成功した!
1.1 うちもそうだった!どうしたらいいでしょうか?
2013年10月下旬のある日、「山見さん、今日午後何時でも来て欲しいのですが・・・」と電話があった。電話の主は、某大スーパーの広報部長。拙著『企業不祥事企業危機対応完全マニュアル』を読んだという。
「どうしたんですか?」とすぐ問う。「数日前大手スーパーの“異物混入事件”が大きく報道された後、他のスーパーでも発覚、当社はメディアからの問合せには当初全面否定していましたが、とんでもない異物混入が発覚したので、この対応法を指導願いたい」と切羽詰まった口調であった。 「何とか窮地を救わねば!」と先約を延期、同日15時から説明を受けた。その結果異物混入は事実だが、意図的ではなく、チェックできない仕組みが原因と現状判断した。 そこで、第一に直ちに危機対策チームを結成しきちんと準備を整え、第二に消費者庁への報告、第三に記者会見実施をアドバイスした。主要ポイントは次の通りである。
1.「発表の遅れ」に対する合理的説明は?
2.「再発しない」とする合理的説明は?
3.「組織ぐるみではない」とする合理的説明は?
4.「トップの関与はない」とする合理的説明は?
5.トップの責任とその処分は?
甘いと見做されない程度は?
6.「プレスリリース」と「Q&A」をいつ完成出来るか?
7.消費者庁への報告と記者発表は最短でいつ出来るか?
8.「発表者」を誰にするか?
気が付くと夜8時を超えていた。
1.2 正確に現状把握、万全資料作り、好転の手を打て!
関係部課長から成る対策チームが急遽遽集合した。週末通して全ての事実をリストアップし現状を詳細に把握、「情報マスター」を作る。それを原資データとして整理分析し、時系列的に並べ直し、確認情報と未確認情報に分け、未確認情報は再確認し、更に抜けがあれば情報を補充しつつ「ポジションペーパー」作りに精を出す。そのプロセスを経て、公式見解(プレスリリース)+Q&Aの原案を作成、トップ(社長)の承認を得なければならない。そうすれば発表者が自信と確信を持って会見に臨めるのである。
私からの注意点は:
・プレスリリースには、不動の事実+間違ってはならない数字や表現+報道して
欲しい・伝えて欲しい数字や表現は網羅する
・当面の対策、経営幹部の責任、顧客への補償等を明確にする
・Qの想定を万全にし、絶対に隠しているという印象を持たれない
月曜9時半より、社長を筆頭に緊急危機対策会議を開き、チーム作成のプレスリリース+Q&A原案をひとつひとつ読み合わせし追加・修正。目途がついた午後一番で、消費者庁に電話し率直に事情説明した結果、翌日10時に報告、11時に消費者庁記者クラブで記者会見を行うことになった。
そこで、同日夕方より再度、社長から担当迄一堂に会して、最終資料(プレスリリース+Q&A)完成に向け、特に語尾の表現に留意し1字1句吟味し文言を選び修正、社長の最終承認を得た。
発表者を誰にするかで企業の姿勢が問われるので、出来るだけ上位者を推奨した結果、社長自身と常務に決定。広報部長が司会することになった。
私のアドバイスに従い「今回の異物混入は、単発的な問題であり、意図性はなく組織ぐるみではないことを明確に表現し、直ちに実行可能な当面の対策を2-3明示、責任者の処分については絶対に甘いと言われない様に厳正にする等、開示出来る項目は全て記載することを徹底した。記者がすぐ原稿作成に取り掛かれるに必要な情報を盛り込むと、質問も減り、記者の手間も省け、間違いも少なく意図する内容での記事となる可能性が高くなるからだ。