『広報卓越者になる法』
今日のテーマ:「広報の達人の素質」
2011年6月26日(日)
■情報に情熱乗せて率先す
人の痛みがよく判る人
『成功への情熱』(稲盛和夫著)に「情熱は成功の源です。成功させようとする意志や熱意、そして情熱が強ければ強いほど、成功の確率は高いのです」とある。
達人を志望する人物は、まさにこの情熱を心魂に抱いている人だ。目の前の目標だけを追いかけず、将来の企業理念やビジョンの実現という成果を常に見据える。そしてひとつひとつの情報に情熱をのせて、業務遂行に邁進する。何事も率先垂範し、プロアクティブ(先取能動的)な言動を行う人物たるべし。情報はますます高速化し、かつ大容量となる。その中から必要な情報をいかに他社より早く、多く入手できるか?そして社内戦略に活用できるか?という厳しい凌ぎを鋭く削れる人でなければならない。
その一方で、繊細な心がいる。小さなもの、弱いものの心の痛みが判る人が望ましい。少なくともそうしようと思い、願い、努力する人である。
「広報」には、社内外においていろんな階層の人が多く関わる。そこには意欲と欲望・期待と嫉妬・誇りと野望・好きと嫌いなどが渦巻いている。より弱い立場にある人たちの心情を理解してあげられる人、心根を感じ取ろうとする人は、達人の素養を満たすこと充分である。
「寒さにふるえた者ほど
太陽をあたたかく感じ、
人生の悩みをくぐった者ほど
生命の尊さを知る」
(米国詩人ホイットマン)
■スピーディ 臨機応変的確に
感性光るグローバルな人
ジャック・ウエルチは、社員が勝利するための処方箋を「三つのS」に集約した。その第一がSpeedyスピード、それからSimple単純さ, Self-Confident自信である。
情報は生もの、すぐ腐る。並外れたスピードが要る。臨機応変さと緩急も欠かせない。ただし、「お客様のために」がつく。
鋭い感性で状況を把握し、常にお客様第一主義で動く柔軟な人は、誰からも歓迎される。しかし、「手前勝ってな柔軟」では困る。柔軟が過ぎると、優柔不断になる。それなら堅固がいい。自分の意思をはっきりし、責任をもって対応する。しかし、頑固はダメ。口が固いのはいいが、人が固いのは遠慮する。
『易経』に「至柔至剛」とあるように、達人志望者は、真に剛に徹するために、柔に徹すべきであろう。すると、グローバルマインドが持てる。それは単に国際的というだけではない。望ましくは、地域・時間・空間における三次元のグローバルであって、それぞれ国境・時差・障害を乗り越える多面的なものでなければならない。
国際語としての「英語」は強い武器の一つであるが、グローバルな感覚を身につけることが何よりも大切である。
「自分の世界の広さは
“心の広さ”に比例している」(『小さな自分で一生を終わるな!』
ウエイン・ダイアー)
何年か前の話だが、講演した後、名刺交換した中に「(株)高速屋」取締役木下政利氏と名前があった。そこで「珍しい社名ですね。どんな会社ですか?」「いやー、設立間もないのですが、社長が世界一速いIT技術を開発したのでこれから広報に力を入れたいのです」と。
「世界最速!」に興味を持った私は、千葉まで出かけ、新庄敏男社長の話に感動した。同社長は、大手企業から独立、既存技術をまったく使わずに画期的設計思想を発案、「データ処理速度が従来の百倍という世界初の革命的技術」を独力で開発した。
「百倍」とは東京ー大阪間新幹線百八十分が一.八分、あるいは夜中のバッチ処理八時間がわずか四分という驚異的スピードだ。その独創性と革新性がメディアの注目を浴び、大量データ処理が必要な大企業が導入を図っている。「日本発の技術で世界を席巻」という高いビジョンと志を着実に実現していくことを確信する。
「柔能(よ)く剛に勝ち、
弱能(よ)く強に勝つ」(『十八史略』)