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『広報卓越者になる法』
今日のテーマ:トヨタのケース
2010年2月13日(土)
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今回のトヨタ自動車の広報対応を見た見解は次の通り。
■危機対応の原則からみて:
1.「先手を打って記者会見」の原則
発表とは、社会的責任の表明、企業の姿勢を積極的に示すこと。
顧客第一主義を標榜するトヨタであり、品質を最優先するトヨタであり、世界の日本ブランドを誇りとするトヨタであれば、昨年、色々な問題が発生しているどこかの時点で、先手を打って、お客様+社会に向けて発信、その後も先手を打って対応していくべきであった。つまり、世界の超優良企業J&Jのお手本対応「タイレノール事件」の教訓を学ぶべきであった。特に米国であれば尚更のこと。
2.「先ず、感情的に謝罪、次に論理的に
説明」の原則
原因や責任の所在とは別に、顧客に与える迷惑や不安はトヨタが起因すること!
それに対しては先ず、謝罪。その後は論理的に説明していく姿勢が望ましい。今回のトヨタの対応は、逆に一貫して論理的説明に終始し、最後の切羽詰まった感じで、社長が登場して公式に謝罪した。特に、昨年来、問題を、「フィーリングの問題」とか「強く踏めばよい」顧客の“運転の仕方”に転嫁しようとした姿勢は、命のかかるアクセルやブレーキの問題からすると、トヨタという尊敬される超一流企業の対応からは外れている。
「JR西日本列車事故」では、最初の段階で「レールに石があった」ことが原因のような発言があったが、それが間違いとなり、謝罪の言葉よりも論理的に言い訳し、責任を転嫁しようとした姿勢が厳しく指弾された。
3.「発表者の役職により、その案件に対する企業の姿勢が判る」の原則
この原則からすると、今回、最後まで社長が出なかったこと、「なぜ社長が出てこないのか?」というトップからの説明を求める声(日経5日の朝刊3面)でようやく社長が出てきた!というのは、トヨタはこの案件を軽んじていた! つまり社長が出る程の問題ではない、単なる品質問題、運転者の問題・・・と考えていたと看做されることになる。
5日横山品質担当常務の「現時点では重大な問題ではない」との発言は驚き。
尤も、社長が出る程の問題にしたくない!という下の思いかも知れない。
「What 何を言うか?」も大切だが、「Who 誰が言うか?」が問題。
同じことを言っても、責任ある人物の発言は意味が異なる。
政府でも代議士発言と首相発言とでは、同じことと言っても全く異なるのと同じ。
従って、社長の「トヨタは社員誰が発言しても同じ」だから「詳しい人間がタイムリーに出てくるのがよいと思った」というのは、この原則からすると外れる。このような場合は、トップに詳しい人間を同席させることだ。そこに「誰かが詳しい説明すればいい」という、会社としての謝罪姿勢が感じられない所以であろう。
4.「危機は人災」の原則
企業を取り巻くいかなる危機も自社の誰かが関与している「人災」であることを肝に銘じるべき。物造りも、誰かが物を選び、誰かが造り、誰かがその品質を承認し、誰かが問題を知り、誰かが見逃し・・・誰かがどこかで決断し・・・。このように問題発生には、必ず、人が絡む。
天災といえどもその後の対応は人である。
今回、これまで問題を発展させてきたことを反省しなければならない。
トップを含み責任者の発言は、事件事故に拘わらず、発言した途端、危機に転化することを改めて認識すべきである。例えば、売上高の数字を掲げた途端、その達成責任が生じ、未達リスクが生じる。
というように、今回の対応は、私の考える原則から外れているもの。トヨタともあろう会社がこのような対応であることは、悲しいこと。日本の世界に誇るリーディングカンパニーとお手本となってもらう必要があるからです。
人間のあり方と会社のあり方を一致させよ!と常々主張していますが、間違いを犯した時に自分がどうするか? 今回のトヨタは、口をつぐみ、何カ月もきちんと謝罪もせず、トップがこそこそと逃げ惑っていた感があり、その辺が不信感を抱かせることになっているもの。
そのような人物が急にはなかなか信用してもらえないのと同様に、信頼を回復できるまでには時間がかかることでしょう。