一寸でも自分が目立ち、人の評判がよくなったら、その時こそ、喜ぶよりも貴方は警戒しなくてはならない。貴方の周囲は怖い嫉妬の刃で目に見えない垣がつくられている。
・上司からよく声をかけられる
・人より早く係長や課長に昇進した
・人より少し給与・賞与が上がった
・少し美人(美男子)と付き合っている。結婚した。
・少しいい車に乗っている。
・少しいい大学に入学した・・・何でもいい。
他人よりも少しいい状態が他人に見えたら、すぐ「妬(ねた)み、嫉(そね)み、やっかみ」の「3つのみ」に注意しよう。人の嫉妬心位恐ろしいものはない。
うまいお世辞や賞賛の中にさえ、毒気を吹き込まれる。お調子に乗っていい気になる前に、先ず、足もとによく気をつけて一歩、一歩、手堅く進んで行く注意が肝要。
人間がどんなにしても克服できないものがある。それは嫉妬の感情である。
「嫉妬は此れ天童のにくみ給う事なり」と『今昔物語』にもある。
井原西鶴は「人がよき事あればとて、脇から腹立ちけるは、無理の世の中の人心」(『本朝二十不幸』)と記している。
他人が自分と同等以下に苦しんでいると思っている間はお互いに苦しんでいることにある安心感を抱くものである。しかし、その1人が成功し、懐が豊かになったのが目につけば自分は遅れをとり、後に捨てられたように切ない気持ちになる。そこに嫉妬に念が起きるのだ。
可愛がっていた後輩が出世して、羽振りがよくなってきたのに比べ、自分が少し落ち目になった時には、夜中に無性に腹が立ってくるやら、情けないやらで眠れないこともあろう。それも嫉妬の刃と言えよう。男女の仲では嫉妬は愛の反面ではないか?
三島由紀夫は「男に嫉妬の本当のギリギリのところは、体面を傷つけられた怒りだと断言してもよろしい」(『不道徳教育講座』)と喝破した。
「愛から嫉妬が生まれるように、嫉妬から愛が生まれることもある」のだ。
【山見博康】