「ちょっとそのペンを貸して下さいませんか」と頼むにも借りるとなると大いに気兼ねするもの。こんな時にも、にこにことして「さあどうぞ」と言いながら、差出し、四方山話の一つでもする余裕があるといい。さらに、メモもさせだすくらいのサービスをする心がけが大切だ。
もし、それが商店でもあれば、必ず一度はお客様になりたいと思うのが人情というもの。人間はちょっとした感じの良さ、気がねのなさ、愛想のよさにひかれるものだ。
商売人ばかりでなく、その人への人気はこんなことからも一歩一歩築かれていく。
お金を使って広告を打ち、大きなイベントを行い、一度に多くの顧客獲得方法を苦心するのも顧客拡大の便利な方策だが、むしろその後の方が大切であることを忘れてはならない。日頃の応対、電話対応・・・が一つ間違えば、顧客の心はたちどころに離れていく。天気と同じく、人の心のあり方ほど移つろいやすいものはない。
しかも、お客様は黙って去っていく。
山見博康