この頃は義理も人情もない人が多くなりました。義理も人情も何気なく使う言葉ですが、夫々の意味を正確に知ることから始めましょう。
『大辞林』によると、義理とは、
1.人として行わなければならない道。物事の道理。「義理を欠く」
2.世の中のつきあいの関係からやむを得ずしなければならないこと。体面。
「義理で出かける」
3.血縁のない者が肉親と同じ関係を結ぶこと。「義理の母」
4.意味。意義。訳。理由。「彼に謝る義理はない」
英語では、obligation, duty, justice。
忘れがちなことは、1と2。特に1の人としてやるべきことをやらないことが目に余るからです。例えば、世話になったらお礼状を認めるなどです。2を怠れば人間関係が長期的に保たれることなく、疎遠になるのです。
人情とは、人に自然に備わっている人間らしい感情・情愛。
英語では、human feeling, sympathy, pity, kindness。
「人情話」「人情味」(人間としての温かみ)などで使いますが、これが薄らげば薄らぐ程、野獣に戻っていることになります。
しかもそれを新しい人間だ位に思っているようです。義理人情を第一に考えてしかもそれに縛られて人間らしい事の出来なかった時代もありますが、現代の様に、時世の勢いでそんなことを考えずに言動することこそ、人間としてのコミュニケーション能力を欠くことになっているのです。
欧米式エチケットは、2の義理義理で固めた形式・格式、王族貴族の支配者階級が自らの権威を守る為に、作法として庶民に要求し、上位者を無理やり敬愛させるように型にはめたものでもあるのです。日本でも将軍家、大名などへの礼儀はがっちり型にはめられているものもあります。
しかし、日本の義理は、むしろ「思いやりの発露」「惻隠の情」からきたようなものも多いと思います。
義理人情を捨てた様な人間は、日本的でもなくあちら的でもなく、人としてのエチケットをも身に付けずにまさに、猛獣と心得て交際すべきです。
「不和の仲ほど義理深し」(近松半ニ『妹背山婦女庭訓』)ともいい、「義理人情は賄賂よりも難しい」とも言われます。
夏の一夜を自らの「義理」の有り方を冷ややかに省みることは、暑さを冷やす氷のかけらにもなりましょう。
1.親に不義理していないか?時に電話しているか?
2.お世話になった先生や先輩に不義理していないか?
3.友達にも・・・。
4.子供にも不義理してないか?つまり、本を読んであげる等一緒に遊ぶことは親の義理でもあるのです。
人情については、次回にします。
【山見博康】