あらゆる生き物は、独りで生きていくことは
できません。なぜなら、自分の存在そのもの
が種の保存の営みによる継続結果であるから
です。
「自分は独力で・・・」と強がってみても、
所詮人様のお世話になり、人も自分との係わ
り合いによって日々の生活が成り立っている
ものです。南の絶海の孤島で食べ物さえあれ
ば生きていけるのですが、自分限りで生命は
途絶えてしまうのです。
つまり、人生とは、世の中でいかに人と人と
の間を上手く、良く、円滑にやっていくかの
繰り返しではないでしょうか。
日々喜び怒り、悩み哀しみ、楽しみ苦しむ限
りない反復継続の過程であるといえましょう。
つまり、「世渡り」の上手下手が人生におけ
る幸不幸に大きな影響を与えていると言って
も過言ではありません。
【池田敏子さんのこと】
池田書店創業者池田敏子さんは1904年山
形生れ。小学校を出ただけで上京、教会の保
母学校で学び、そこで知り合った文学青年と
結婚し出版会社設立。ベストセラーを連発し
たが戦後離婚。1949年(昭和24年)
池田書店を設立し、教養シリーズ出版を開始。
自分自身も、近藤信緒というペンネームで
『人を知る法』を初め10冊以上の著作があ
ります。1970年には『性生活の智恵』を
出版、女性の4人に1人は読んだという性革
命の書で450万部の一大ベストセラーです。
1980年に80歳で逝去
私が、教養書の1冊『人に好かれる法』と出
会ったのは30年以上前。古めかしい茶色に
日焼けしたこの本を一読して深く感動し、
2006年に願い叶って60年振りにダイヤ
モンド社復刻することができたのです。
私は、池田敏子という女性に惚れ込み、密か
に伝記を書いています。
同女史の著作に『世渡りの秘訣』があります。
これから、それを参考にして私の経験を含め
て、新たな『世渡りの秘訣百か条』をお送り
しましょう。
第一条 自分の為にもよく、
相手の為には更によく
自分などはどうでもよい、人のために
なりさえすればという人は喜徳な人で す。なぜなら世の中には、人などはど うでもよい、自分のためにさえよけれ ば、という人が多いからです。しかし、 両方とも同じように間違った世渡りで
はないでしょうか。
どちらも幸福や成功から遠い道にな
ります。他人と自分とは別々の様で、
実は目に見えない所で同じ運命の車に
乗っているものです。
本当に自分が可愛い人は、相手を大切
にします。いや、自分を大切にする人
しか、他人の心の痛みを察することは
できないと言ってもいいでしょう。
つまり、自分を大切に思わない人には、
他人の本当の大切さが分からないもの
です。
自分と他人の運命は歯車のようにきち
んと絡み合っています。その運命の歯
車をいい方向へと導き、狂わせないよ
うにしましょう。
「おのれに存する偉大なるものの
小を感ずることのできない人は、
他人に存する小なるものの偉大を
見のがしがちである」
(岡倉覚三『茶の本』岩波書店)
【山見博康】