「苦しむことから始まって、

   辛(つら)さを超えたら心に痛みがきて・・・・・、

   谷しかなかったが、最後に山に登れて良かった。

   最終的に、日本の皆さんに笑顔を届けられた。

   最高!

   (決勝打を放った)僕は(強運)を持っている。

   神が降りてきた!」      

                  イチロー

 (2009年3月24日(火)第2回WBC優勝後のインタビューで)

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第2回WBCは宿敵韓国を5-3で下し連覇を果たした

「侍ジャパン。

世界中の日本人に感謝感激感動の三感を発信散布し、

感涙で満たしました。善き人にも悪しき人にも、高貴な

人にも庶民にも、富裕の人にも貧困の人にも、トップにも

平にも、非凡な人にも平凡な人にも・・・。


“「三感」を供与できる人”は万人の願いですが、その

最高の人物の一人が「イチロー」であることを改めて

実感しました。

同点に追いつかれ、追い上げられる厳しい局面に

立たされた延長10回ランナー2・3塁、ツーアウト、

ボールカウントツー&ツーでセンターへ弾丸ライナーの

クリーンヒットで2者をホームに返す決勝打を放ったことは、

誰の心にも永遠に残ることでしょう。


イチローの談話:

「ここで打ったら、僕も(運命的なものを)持っているなあとか、

ごっつい視聴率だろうなあ、とか。そういうときはなかなか

(安打が)出ないもんなんですけどね」


「最初は韓国のユニフォームを着、次はキューバのユニフォ

ームを着たが・・・、最後でジャパンのユニフォームを着ること

ができてうれしい」


冒頭のイチローの言葉は、三浦雄一郎さんが75歳で最高齢

エベレスト登頂を果たした時に発した

「涙が出るほど、つらくて・・・、きびしくて・・・、そしてうれしい」


を思い起こさせてくれ、感動を増幅させてくれました。


非凡な二人のイチローが語ったことばは、苦難を歩き幸福を

見出す「神の御言葉」です。


 「時々刻々にわれわれを悩ます小さな災難は、大きな災難

 に耐える力が幸運のあまりにすっかり衰えてしまうことが

 ないように、われわれを絶えず訓練するためにあるのだ」

    (ショウペンハウエル『幸福について』)


イチローは不調だった時きっとこのような心境で乗り切ったの

でしょう。


そして、


  「わざわいは避けるな。雄々しく立ち向かえ!

   一片の紺碧が空にある限り、

   天候を絶望視してはならない。 

   好転の可能性がある限り、

   怯(お)め、臆しようなどとは思わず、

   ひたすら抵抗を思え」


と自己の持つ優れた能力と幸運を信じ続けたのです。


どんなに苦しい、重圧に押しつぶされるような時でも、


 「されば猛(たけ)く生きよ。

  猛き胸倉を運命の矢面(やおもて)に立てよ」


と必死でこらえたのでしょう。


それが土壇場で神様の計算通りのお膳立てになり、

イチローは神と民の期待に見事に応えて、あのクリーン

ヒットを放ったのです。

 三独(独自独特独創)が三感(感謝感激感動)を産む」


      「気高い人間よ、

       情け深くやさしくあれ!

       うまずたゆまず、

       益あるもの正しきものをつくれ。

       そしてかのほのかに感ぜられた

       より高きもののひな型ともなれ!」


          (ゲーテ『ゲーテ詩集』)


                   【山見博康】