Pressure makes diamond.
(プレッシャーがダイヤモンドを作る)
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物体に超高圧をかけると様々な性質のものに変化して、実用に役立つものになるが、その一つがダイヤモンドだ。
私の古巣の神戸製鋼は、実は鉄鋼部門の売上は全体の5割弱であとはアルミや機械などが占めた複合経営を行っている。一般には知られていないが世界に冠たる技術やノウハウも多々あるが、その一つが超高圧技術で、人口ダイヤのメーカーでもある。
ダイヤモンド(Diamond、金剛石(こんごうせき))は、結晶構造
を持つ炭素
の同素体
の一つで天然で最も硬い物質
。4月の誕生石
で、石言葉は「永遠の絆・純潔」を表す究極の宝石であるが、これがすべて炭素から出来ている。地球
内部の超高温高圧な環境で生成されることから、
炭素に 1,200–2,400 ℃、55,000–100,000 気圧をかける高温高圧法で人口ダイヤが出来、主にガラスカッターや研磨剤
、一部宝石として利用されている。
結晶構造の多くが8面体で、12面体や6面体もあり、そのカットされた宝飾品の形から、菱形
、トランプ
の絵柄、野球
の内野、記号(◇)を指してダイヤモンドとも言われる。
ダイヤモンドという名前は、ギリシア語
の adamas (征服できない、懐かない)に由来する。イタリア語・スペイン語では diamante (ディヤマンテ
)、フランス語
では diamant (ディヤマン)、ポーランド語
では diament (ディヤメント)という。ロシア語
では Бриллиант (ブリリヤーント)で総称される。
このように圧力を長時間かけるとダイヤのような超硬のしかも超美に輝くものが生れるのである。
思い起こせば、1984年から89年まで豪州メルボルンに駐在したが、それは神戸製鋼が中心となって、豪州に無尽蔵に眠る褐炭を液化して石油を造ろうという日豪政府間国家事業であった。
石油と石炭は、実は同じく炭素からできている構造の異なる炭化水素である。つまり石炭はベンゼン核と呼ばれる亀の甲の形、石油は脂肪族と呼ばれる手の開いた構造だ。つまり、石炭を粉砕し反応塔の中で1300度C、250気圧という高圧をかけると、溶けて石油になるのである。
「Pressure makes oil. 圧力が石油を作る」のである。
これは人間にも通じる。「Pressure makes human.」 と言ってもいいであろう。
イチローやタイガーウッズ、あるいは福原愛ちゃんや浅田真央ちゃんのようなスポーツ選手、またバイオリニストやピアニストも然り、両親が3歳の頃から徹底的にプレッシャーを与え続け、それに耐えた選手が戦いに勝ち、さらに強いプレッシャーに耐えられた極少数の天才だけが世界的選手に育っていく。
オリンピックや世界的な大会でなくとも、どんな小さな戦いにおいても、勝利するには、強いプレッシャーに耐えなければならない。私はバスケ狂で昨夜も若人とボールに戯れたが、中学・高校と福岡県で優勝した経験から、勝敗は後半最後のところで強いプレッシャー下で得点できるかどうかである。プレッシャー下で最高の力を発揮したものが勝利するのである。
吉田松陰は、4歳から叔父の玉木文之進の厳格極まりない教えに耐えて成長した。幼くして山鹿流兵学師範となることを運命づけられている松陰に対する徹底的指導である。
天皇家、将軍家も子供に幼少時から徹底した帝王学を授ける。会社や団体の長になるのもそうだ。「可愛い子には旅をさせよ」「獅子は子を谷に落とす」のもそうであろう。
人間は常にプレッシャー下での厳しい訓練・修養が必要となる。仕事においても、切羽詰った状態での思考・判断が重要であることと同じである。地位が高くなると、常時プレッシャーがある。「役職(ポスト)が人を育てる」と言われるが正確にはPressure of Post makes human. であろう。
私達はできるだけ、Under pressure での力の発揮を心がけよう。座禅を組むのもその一つ、厳しい練習に励むのもその一つ、一定時間内に多くのことを為そうという努力もその一つ・・・それを自分に課すことは、厳しい状況、不利な境遇下においてもプレッシャーに強い自分を育てることになる。そうすることによって、どんな事態に陥ろうとも、揺るがない人格形成を自らに課すことが自分に出来る自分への励ましであろう。
「Pressure makes me(myself)」
貴人は生命の危機に瀕しても
高貴な性格を捨てない。
純金は焼かれても切られても
その色を損なわない。(サキヤ・パンディッタ)
【山見博康】