「効果的なリーダーシップの基礎とは、組織の使命を考え抜き、それを目に見える形で明確に定義し、確立することである。
リーダーとは、目標を定め、優先順位を決め、基準を定め、それを維持する者である。
リーダーと似非リーダーとの違いは目標にある。現実の制約によって妥協せざるをえなくなった時、その妥協が使命と目標に沿っているか離れているかによって、リーダーであるか否かが決まる」 (ドラッカー『未来企業』)
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経営の神様ドラッカーは、リーダーシップには重要であるが、リーダーの資質とか、カリスマ性とかは関係ない。神秘的なものでもない。それはリーダーシップという「仕事」なのである、と言うが、それでは、リーダーシップとは何であろうか?
英和辞典によれば、leadershipとは、指揮者の任務、指導、指導力、統率、統率力、などだ。指揮や指導とあるが、それでは、指揮官と指導者とは違うのか?
その違いについて、次の言葉が判り易い。
指揮官は自分の立場で考え、指導者は部下の立場で考える。
指揮官は命令を伝達し、指導者は命令を理解させる。
指揮官は部下を働かせ、指導者は部下を働きたくさせる。
この指揮官と指導者の差はかなり大きい。それは指導する者のプラスアルファと言えるものであろう。リーダーは単なる命令伝達機能だけではなく、もっと人間的であるべきであることを義務付けられているのである。
未来のリーダーが身につけるべきものの内、25%は経営の技術、他の25%が想像力であるが、残りの50%は教養と呼ばれるものが望ましい。いやもっと教養の部分が大きいとも言われる。つまり、人格者であり人徳者であるべきであろう。
ナポレオンは「一般に人間は指揮するより、指揮される方を好む」と母に教えられたそうだが、リーダーには部下を好む大多数の人々に対して、別格の人間性を備えていかなければならない。どんな小集団でも組織がある。リーダーはその組織のために自らの器量を存分に発揮するのである。
真のリーダーシップをもつ指導者の偉大さは、「人間こそ唯一の富である」という格言を心に銘記し、謙虚さと人間的な温かさをもって、未来に立ち向かうのである。
R.タウンゼントは『組織に活を入れろ』(原書名『Rate Your Boss as a Leader』)において、リーダーの理想像を的確にまとめている。
彼は――
(1)・・・利用価値がある。私が問題に逢着してそれを解くことができない場合、彼は助けてくれ
る。だが、問題でなくて解答を彼のところへもっていく場合は、私の最善を尽くすことを強く要求
する。
(2)・・・包容性がある。私に早く情報を報せてくれるし、私にとって有益な、あるいは刺激的な、あるいは仕事の上で長い間世話になるべき人々を親切に紹介してくれる。
(3)・・・ユーモアがある。気取りの中にコミック精神が多分に見られる。自分がからかわれると、いっそう面白そうに笑う。
(4)・・・公平だ。そして、私のことや、私の仕事ぶりに関心をもち、信用してしかるべき場合には信用するけれども、約束は断じて守らせる。
(5)・・・決断力がある。組織を数日間しか拘束しないようなあまり重要でない決定は、テキパキとやる。
(6)・・・謙虚だ。自分の過ち率直に認め、それから学ぼうとし、部下もそうすることを期待している。
(7)・・・客観性がある。うわべだけに重要に見えること(例えば、社外重役を訪ねること)と、真に重要なこと(部下との集会)とをはっきり見分け、自分を必要としているところへ行く。
(8)・・・気性が強い。社外重役などの外部のおえら方が、彼の時間あるいは部下の時間を浪費させるのを許さない。どちらかといえば、自分の時間よりも部下の時間を惜しむ。
(9)・・・能率的だ。私が習ったことを間違えた場合でも、それを彼に報告しろと言われている。しかし、よいニュースだと思われるようなことでも、何らの行動も必要としないようなことをもってきて、彼の邪魔をしてはならないと言われている。
(10)・・・忍耐強い。私が自分自身の問題を解決するまでは、じっと辛抱していなければならないことを知っている。
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ボスの理想像として、今の上司を上記のポイントで評価してみよう。そして、自らをも同様の方法でratingする謙虚さをもつことだ。
【山見博康】