「5つの信じる力」

1.自分を信じる

2.人を信じる

3.お客様を信じる

4.与えられたチャンスを信じる

5.まず自分から信じる

(池本克之『プロフェッショナル・リーダーの

人を見極め、動かし、育てる法則』(ダイヤモンド社)より抜粋)

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


本書の第4章に「信じる力」とある。20代の頃、著者の池本さんによれば、尊敬する上司からの「Believe yourself」の一言が、同氏の意欲や情熱に点火したというのである。


どんな場面でも、その達成に何らかの困難が伴い、少しでも障害が予想されると、どうしても不安・恐怖が自分を襲ってくる。その軽重は、人それぞれに異なる。感じる対象や程度はその人の経験や性格にも影響されるのだ。

その時、不安や恐怖に立ち向かう自分への励ましの一言は、


Believe myself !!


であろう

世の中の仕事で楽なものはない。楽なものは,楽であればあるほど、今あったとしても、たちまち消滅する。なぜなら、楽は金になるはずはない。たとえなっても長く続くはずはない。デイトレーダーの稼ぎの刹那さが明確な訓えだ。

そこで、われわれ凡人にもできること、それは信じることだ。いかなる人物にも、いかなる物事にも、いつも自信ある仕事など存在しない。誰も自信がある時はほとんどないと言ってよい。イチロー、タイガーウッズにして然り。ノーベル賞田中耕一さんにしても同じである。


しかし、自信はなくとも、信じることは誰にでもできる。この5つの信じることは、日々の細かな仕事においても、実に困難な仕事においても、役立つものと信じる。


脳科学者茂木健一郎さんは、「どんなにすばらしいアイデアがあっても、それだけで道が開けることはありません。アイデアを具現化するためには、人や状況との偶然で幸福な出会いがなければ最初のきっかけがつかめないことが多い」(『脳を活かす仕事術』)という。この「5つの信じる力」は、その偶然の幸運に出会う力「セレンディピティ」を導き、その巡り合った偶然をつかみ取るために必要な力「コミットメント」を生みだす。そして、「5つの信じる力」の実践は、この両方の力を向上させると信じるものである。


茂木先生は、偶然を幸運に結び付けられるかどうかは、実は次の3つの「脳の使い方次第」だと、教えてくれる。


1.行動する

2.気付く

3.受け入れる


自分を信じ、不安や怖さがあろうとも、自信を持って進んで行動することだ。行動することは、思考錯誤=Trial&Error(TAE)の連続を意味する。行動は必ず結果を出す。成功・不成功・失敗かは別にして、必ず何かを発生する。そこで起る様々なことに、まずは気付かなければならない。さもなくば、運はすぐ逃げ、消え、再び戻ることはない。気付いて、嫌なことでも何でもまず受け入れること。自分の過去や常識にとらわれず、受容の心を持つのだ。偶然をコントロールすることはできない。

「機会は容易に与えられないが、容易に失われる」(古代ローマ金言)ので、まずは気づき、受け入れことが、驚くべき発想や物事の進展につながるのである。

「幸運の女神には後ろ髪はない」のだ。この古代からの金言を忘れないようにしよう。


池本さんと私は、実は最初アメンバーの関係だけであった。ところが、ソニー元会長でクオンタムリープ出井伸之さん主催のベンチャー企業経営者の会「鯉のぼりの会」で、偶然出会ったのである。私は去る2月出井さんの要請で同会で「広報」をテーマに講演。ありがたいことに、これが「セレンディピティ」となり、池本さんとの偶然に導いたのである。しかも、出井さんとのご縁も深まり、ありがたくも4月上司の拙著『広報・PR実務ハンドブック』の表紙にもご登場、「序文」までいただいたのであった。さらなるセレンディピティの恵みの継続には感謝の限りである。


池本さんは、種々の企業経験後、2001年(株)ドクターシーラボ社長のに就任、翌年にはジャクダックに店頭公開。2004年には(株)ネットプライス執行役員として同社の東証マザーズ株式公開に尽力と短期間での実績を持つ優れた青年経営者の一人である。

この10月からは、(株)イメージングの社長に就任。同時に本書を上梓。さらなる企業立ち上げに乗りだすことになり、数年後に期待したい。


こうした偶然の出会いは、「コミットメント」によって引き寄せられ、幸運へと活かされる。それ

は、その出会いに没我し、没頭し、没入することによって熟成、昇華するのである。

つまり「自我の意識すれなく、目の前の仕事に没頭する。これが仕事と自分を一体化させるコミットメントという感覚」(茂木先生)なのだ。


この状態とは、いわば「空」ではないだろうか?「空」なればすべてを受け入れることができる。

どんな異形、異考、異動、異人でもやさしく、たやすく、すなおに受け入れて、それぞれの長所、強点、優点が混合、熟成、統合、発展することになろう。


  昨日(きのう)見し人はと問えば今日はなし

              明日(あす)また我れも人に問われん


  今日を限り今日を限りの命ぞと

              思ひて今日の勤めをばせよ

                             【山見博康】