■優秀なリーダーの人間像:

○弱いが強い=自分の長所をよく知り、できないことにはノーと言える勇気を持っている

○腰は低いが背筋は伸びている=謙虚だが自信を持っている

○暗いが明るい=絶望や深い悲しみを経験しているが、明るい

○厳しいが優しい=仕事は厳しく妥協はしない。目標達成にとらわれることなく部下の成長を願っている

(國貞克則、『悩めるマネジャーのためのマネジメント・バイブル』)

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英和大辞典(研究社)によれば、manageとは、本来「(手で)使う、扱う、操縦する」「(人や動物を)御する、統御する、(うまくあしらって)意のようにする」「経営(管理)する」に加えて「どうにかして~する」ともある。

つまり、manageを「管理する」、managerを「管理職」との日本語訳だけでは、的を得ていない。いわば誤訳に近い。


マネジメントを管理することだと思っている人は、どこまでいっても部下をうまくマネジメントできないことになる。マネジメントは管理ではなく、戦略が論理性だけではない。


著者、國貞氏は神戸製鋼所で、プラント設計、人事、企画などを経て、1996年米国クレアモント大学ピーター・ドラッカー経営大学院でMBA取得。神戸製鋼でも将来を嘱望されるトップエリートの一人であった。ところが、天運天命にしてか、突如脱サラ。2001年ボナ・ヴィータ コーポレーションを設立して独立。今や主に中小・中堅企業の社長の右腕として経営コンサルティングを行う。子供向けの竹とんぼ工作教材を販売する「竹とんぼ屋」の店主でもある。そこに至る苦難の結晶がベストセラー『財務3表一体理解法』(朝日新書)などの熟成した著作として結実している。

本書は、リーダーシップの真髄を深考、心の理から説き、國貞氏の本分を余すところなく記述した名著だ。読者に勇気を与え、奮い立たせるエネルギーがある。


つまり、GEのジャック・ウエルチの唱えるリーダーに必要な4E:


▼Energy   =自分の達成エネルギー・情熱

▼Execution =困難に耐える実行力

▼Edge     =厳しい状況での決断力

▼Energize  =人の心に点火しエネルギーを注入する力


の内、人をEnergizeできる数少ない著作である。


このような優れた著作は、真の意味で、苦悩+汗(努力)+思いやり+感謝が、長年のそして凝縮した蓄積醸成を通じて滲み出たものからしか産出できないもの。そこに著者の人間の独創性と他者がなかなか到達できない真骨頂を見出すことができる。 悩めるマネジャーはもちろん、すべての経営者が読むべきバイブルである。どんな組織、グループ、小集団、集まり・・・における人と人とのつながりに日々苦悩・苦慮・苦心するあらゆる人の救いとなろう。


この善なる書は、弱い人には励みを、強い人には省みを、自信なき人には誇りを、自信ある人には謙虚さを、実行力なき人には勇猛さを、実行力ある人には自制心を、そして、あらゆる人に自己の尊厳を崩さず、人間として高い誇りを抱き、相手の立場を理解してこれに善処し得る能力を授ける。 この能力あってはじめて、周りの人たちすべてを生かし、相互に仕事への意欲を高め、人生への歓喜を味わい、生活を豊かにし、生きる悦びを享受し得るものである。


機縁にも神戸製鋼時代の後輩であり、友人である國貞氏の存在は、私に誇りと励み、憧れと望みを与えてくれる。心より感謝する。

人は常に二律背反、白か黒、表と裏、正と邪、矛盾と整合、良と悪、善と不善・・・の間を歩く。天秤でその程度を測ろう。人は皆個性。あらゆるものに幅・深さがある。そのどこを歩くかに人間の違いがある。それぞれ自分の人生がある。ふとした思いつきを下記に記そう。


【コミュニケーションの恕15か条】

1.「弱いが強い」&「強いが弱い」

2.「腰は低いが背筋は真直ぐ」&「背筋は真直ぐだが腰は低い」

3.「暗いが明るい」&「明るいが暗い」

4.「厳しいが優しい」&「優しいが厳しい」

5.「あっさりしているが粘り強い」&「粘り強いがあっさりしている」

6.「静だが動」&「動だが静」

7.「訥弁だが雄弁」&「雄弁だが訥弁」

8.「誠実だが辛辣」&「辛辣だが誠実」

9.「細やかだが大らか」&「大らかだが細やか」

10.「奥床しいが軽やか」&「軽やかだが奥床しい」

11.「にこやかだがするどい」&「するどいがにこやか」

12.「ゆったりだがすばやい」&「すばやいがゆったり」

13.「軽々しいが重々しい」「重々しいが軽々しい」

14.「熱いが冷たい」&「冷たいが熱い」

15.「誇りは高いが気位は低い」&「気位は低いが誇りは高い」

【山見博康】