「勘は、理性による判断でもなく、五感の判断でもない。それら以外の第三の判断である、しかし、勿論、人が勘で判断する場合にも、その判断の材料となるべきものがなければならない。その材料は、多くの場合、目で見るとか、耳で聴くとか、或いは自分を取り巻く周囲の空気に触れるとかして得たものである」

(中山盛行『肚と頭と勘』)

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勘とは、「物事を直感的に感じ取る能力」「第六感」です。

●勘がいい(悪い)

●勘が狂う

●勘に頼る

●勘が働く

●勘が鋭い(鈍い)

●勘を研ぎ澄ます

●勘が鈍る

などと使います。これは動物的本能から来たもので、部分的には動物には敵いません。例えば、鳥の視覚力、魚の魚眼的視野、犬の嗅覚や聴覚などを考えただけでも到底人間の能力を遥かに凌ぐものです。人間の五感はそれぞれが退化したものでしょう。しかし、人間にはその分、知力的な勘があります。それは他の動物にはないものです。猿やチンパンジーにはその知恵が育っています。こうした中で人間は勘は勘でも、総合的な勘、或いは複合的な勘を磨くことが人間たる強みでもありましょう。


世の中には勘のいい人、悪い人がいます。何かと先取りして動き何らかの成果を獲得する人、何かと後手後手を踏み、ちょっとタイミングがずれて、いいところまで行きながらも獲物が取れない人。こういった違いを私の経験から考えてみましょう。

中学からバスケットボールを始めた私は、恩師故丸山喬先生の情熱的指導でその魅力の(とりこ)になり、今も週一回若い人とボールを追う“バスケ狂”です。それは、高齢でも軽やかにプレーを楽しまれた先生の姿を追い求めつつ、見えないものに対するを、年のせいで鈍らせないためです。私にとって日々の仕事はバスケの試合。「情報はボール」「世界がコート」そこに「五億人のプレーヤー」がいる。電話や来客・訪問はパスの授受。電話でボール(情報)をキャッチするや、どのプレーヤーにどんなパスをタイミングよく放つかは一瞬の勘。顧客訪問はパスと同じ。いいボールをパスし、うまくシュート(成果)を決めてもらうのです。

動かないといいボールは来ないし、動いているプレーヤーにしか絶好のパスは通せません。チャンスは自ら動くプレーヤーにのみしか生まれない。そこで、緩急つけた一瞬のスピードで動きパスを受け、シュートしたり、自らチャンスを創り、瞬間に緩急のパスを放ってポイントゲッター(お客様)に得点してもらうアシストプレーを心がける。自らゲットする力がなければアシストもできない。油断すれば瞬時に抜かれる。そこで、いつも感性=勘を研ぎすまし、一瞬のチャンスに鋭角にカットインする勇気と闘魂を燃やし続けなければ、先んじることはできないのです。

丸山先生や高校のコーチ故橋本武二先輩から独自のテクニックを学び、小が大を凌ぐ(すべ)を身につけて県や九州を制したのは、我々のほうが敵より一瞬早く動き、勘よくパスやシュートができたからに外ありません。コンビネーションプレーやカバーディフェンスなどは、いかに味方や敵の次のプレーを察知する勘の勝負そのものです。パスするプレーヤーは四つに分かれます。


▽ノーマークになりそうなタイミングでパスを放つ人・・・一流


▽ノーマークになったタイミングでパスを放つ人・・・・・・二流


▽ノーマークになったのを一瞬見逃し、パスを放つ人・・三流


▽ノーマークに気つかず、パスできない人・・・・・・・・・・四流


▽ノーマークでなくとも、空いたスペースにパスを放てる人・・超一流(か論外か)


これを飛び込み営業で考えると判りやすくなります。例えば、超一流の選手とは、とんでもない成績を収める人と同じく、独特の勘と嗅覚をもって動く人でしょう。一流は常にトップクラスの成績を上げ、二流は派手ではないが、着実に実勢上げる人と言えます。反対にどうしてもちょっと遅かったり、お客様が望んでいる情報をタイミングよく提供しなかったりするのは、三流以下の人とみなせます。サッカーやラグビーなどの団体競技にしても然り、柔道や卓球など個人競技でも然り、勝負はすべて、勘によるタイミングと正確さによって決まっていくのです。

顧客へのプレゼンを前に、質問予測力を駆使してどんな資料を準備し、どんな質問にも答えられるようにするかを、どの程度広く、そして、どの深さまであるいは細やかさまで気遣いするか、できるかが優秀なセールスパースンかそうでないかの境目になるのです。

この勘は、発明・発見上においては、純粋に個人としての動物的勘による部分もありますが、日常の仕事は人と人との接し方、コミュニケーションの巧拙、香りを感じる感性・・・と言うような研磨できる部分も大きいもの。その一つが、”思いやり」です。孔子がこれを「恕」と言い、優れた人間の感情として大切にしています。

勘は恕により、恕は勘により相互研磨されるのです。人それぞれがこれを日々行う努力は人々の友愛の気持ちやコミュニケーションの円滑さを育成することでしょう。

論語に「己れの欲せざる所、人に施す勿れ」つまり、自分がして欲しくないことを人にしてはならない」との訓えがありますが、これはまさに人への思いやり(恕=じょ)です。孔子はこれを終世大事にしなさいと弟子に訓えています。

「子貢問いて曰く、一言にして以て身を終うるまで之を行うべき者ありや。子曰く、其れ恕か」(『論語』)


私たちは、眼前に往来する物事に対して、常に勘を働かせ、恕によって司っていけば、相手の尊厳を守り、しかも自己の尊厳をも崩さずして、善処しうることでしょう。これが超一流のコミュニケーション力を高める王道であります。

【山見博康】

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