「太い字で細かい字を書く――これが人生を渉る秘訣だ。

 然し、それには十分な力量がなければならぬ」

                      (安岡正篤)



力量とは、力の強さの度合い。能力の程度。腕前。能力がある

ことです。その力量の発揮をどのように行うのかが、それぞれの

人生の過ごし方になります。

時は明治維新の10年前、久坂玄瑞とともに門下生4天王の1人

高杉晋作から、

「男子の死すべきところはどこでしょうか?」

問われた吉田松陰は、刑死直前の獄中から応えて曰く、

「世の中には生き長らえながら心の死んでいる者がいるかと思

えば、その身は滅んでも魂の存する者もいる、死して不朽の見

込みあらば、いつ死んでもよいし、生きて大業を成し遂げる見込

みあらば、いつまでも生きたらよい」

との手紙を送ったのです。高杉晋作はその後、いくつもの暗殺

の危機を間一髪で潜り抜け、師匠から吹き込まれた倒幕の志

を全うすべく東奔西走。明治維新の原動力となり多大なる貢献

を果たすも、の成就を見届ける前に、わずか27歳で病死する。

師匠吉田松陰も30歳で刑死しますが、今や松陰神社に奉られ

「太い筆で細かい字を書いた」最大の人と言えます。その教え

に忠実に従って偉業を成した弟子の高杉晋作も同様です。

私たちは、その個々の能力を信じて、大義を目指すことです。

大義とは、平たく言えば、ビジョンであり、人生の目的ですが、

そこに世の中の人に役に立ち、何らかの善なることを行うもの

でなくてはなりません。

誰しも、それを成し遂げる十分な力量があるのです。無いと思

う人は、ただ、発揮していないか、発揮の仕方が分からない人

です。太い字(大きな志)で細かい字(日々のこと)を着実にや

りましょう。

                              【山見博康】