私の母校福岡県の嘉穂高校の大先輩でもある花村邦昭氏
(日本総合研究所特別顧問)は、心魂の著『知の経営革命』
において「経営とは付加価値連鎖の創出である。その連鎖は、
顧客の顧客のその先の顧客・・・、最終的には消費者まで繋
がっている。さらに組織内部あるいはすべてのステークホルダ
ー、さらにはコンペティターも含めて社会の隅々まで広がって
いる。つまり、すべては知価共創の無限連鎖の関係にある」
と言われています。つまり「仕事の報酬は仕事」なのです。
お客様に感動される仕事をすればよりよい、より高度な・よ
り困難な仕事をいただける、その仕事こそがもっとも大きなご
褒美、真の報酬ではないでしょうか! お客様に喜ばれる仕
事は、多くの人が個人の知を「共有」し、それらを「共用」し、
お互いに「共鳴」してよりよいものを「共創」することによって
得られるのです。“知=ナレッジの価値連鎖”が重要なので
す。言い換えれば“仕事のリピーター”が永続的な報酬なの
です。金銭の報酬はそれに従うもの。眼前の札束だけを狙
ってやる仕事はいずれ行き詰まり、悲嘆の時が待っている
とも言えましょう。永続的な報酬である仕事の甘美さが、そ
の能力をさらに高め、心の愉悦となり、人生への生き甲斐へ
と螺旋(らせん)的昇華を遂げるのです。
カール・ヒルティは「人を幸福にするのは仕事の種類では
なく、創造と成功との喜びである。仕事の動機は常に二種
類ある。低い方の動機は名誉心・貪欲・生活維持の必要で
ある。高い方の動機は、仕事あるいはそれに関係する人々
に対する愛・責任感である。真に仕事に没頭する本当の勤
勉を知れば、人の精神は働き続けてやまない。これが仕事
の報酬である。未来は働く人のものであり、社会の主人は
いかなる時代にも常に勤労である」(『幸福論』)と諭します。
私たちは、仕事への動機に愛があるのかどうかを自問自
答してみるといいでしょう。
山見博康