今日散髪に行くと、当たった理髪師は初めての若い方、
風邪気味なのかマスク顔。眉毛は濃く目もとが清々しい
175cm位の細身の男性でした。
「どの位の長さですか」
「少し短めにお願いします」
「だいぶ伸びていますが、3ヶ月位経っていますか?」
「いや、1ヶ月位ですよ。でも前回は少し長めにしてもら
ったから、早く伸びたのでしょう」
「刈り上げますか」
「いや、刈り上げずにはさみでお願いします。頭の後ろ
が出っ張っているので、少し伸びるとちょうど段がつく
のです。頭の中も外も悪いのが欠点ですね」(笑い)
「それではその辺を注意してやりましょう」
「お願いします」
あとはお任せスタイル。自分の容姿に逆らう気持ちもな
いので、いつも殆ど注文はないのです。
しばらくカットした後、目を閉じていると、最後の髪の細
部まで細かくはさみを使って揃えているような感じです。
それが何とも気分のいいはさみ捌きでした。つまり、指
先とはさみが生きているようで、私の髪の穂先に微かに
触れては離れ、離れては触れ・・・と細やかなはさみの
擦れ合う音が耳に心地よく響くのです。
何か一つの魂が入っているような感じでした。
そこで、聞いたのです。
「貴方にしてもらったのは、初めてですが、かなり前
からここにおられましたか?」
「1年ちょっとです。どうしてですか?」
「貴方のはさみ捌きはこれまでの人とまったく違うか
ら」
「下手ですか?」
「いや、反対に別格の巧さですから・・・」
「それはうれしいですね」
「貴方が指先に精魂を込めて、はさみを捌いている
ことを感じます。恐らく、懸命に腕を磨き精進して、
いずれは独立の気概を持っているのでしょう」
「実はそうなんです。いずれは・・・。どうして、そんな
ことが分かるのですか?」
「私はPRやマーケティングのコンサルティングをして
いるので、いつもそんな目で見ているのです。あな
たの指先がそう語っているように感じたものですか
ら。他の方のはさみ使いというか、髪の毛に当たる
フィーリングが、全く違っています。生まれはどこで
すか?」
「青森です」
「どこで独立するのですか?」
「出来れば青森の方がいいのですが、やはり東京か
な? どんなお仕事ですか?」
「人や会社をいかに売り出し、ブランド化するかのお
手伝いをしています。ご興味あればHPを見て下さ
い。そうそう、昨日のフジサンケイビジネスアイとい
う新聞に私の『だから嫌われる』という本の記事が
でましたので、コピーをあげましょう。今日の読売新
聞朝刊にも紹介されましたよ」
「そうですか。面白そうですからぜひ読ませて下さい」
と言っている内に終わって、「山内です」と名乗るの
を聞きながら理髪店を後にしたのです。
今夕は、頭も爽快、いい男に出会えて気分も爽快で
した。やはり、志は指先に現れるもの。魂が指先に乗
り移るものです。指先に全精力をつぎ込み、全身全霊
を込めて仕事をすることです。
それが、相手にも伝わり、共鳴することによって、共
創の人生が生れるのでしょう。
【山見博康】