混迷を極めている。都知事選のことだ。
その一つには、俳優の石田純一氏(野党統一候補という条件付き後、見送り)と、その統一候補となったジャーナリストの鳥越俊太郎氏の登場もあることだろう。
ところで。ご存知だろうか。大空を駈けるジェット機は、みんな高度1万メートルを飛ぶことを。
この理由は明確で、主に3つのメリットがあるそうなのだ。
まずは、薄い空気中を飛ぶことにより、燃料を節約できる。(速度を維持するための推力が少なくて済む・これ以上の高度になると、推力にとって非生産的になる)
つづいて、嵐などの気象現象の上を飛ぶことができる。(安全なゾーンを飛行)
さらに。重力と揚力が絶妙に一致する。(翼から生まれる揚力と落下しようとする重力が最も釣り合い、水平飛行がしやすい)
ようするに、高度1万メートルとは、効率的で、快適で、リスクの少ない場所であるのだ。
もしかしたら、飛行機嫌いの人も少しは安心できるかもね。このような理由を知れば。
さて、冒頭のお二人。東国原英夫氏はこうツィートされていた。『覚悟と理念と哲学が何もない』と。おそらく、出馬理由にあたる根本(志や信条等)が分かりづらいのだろう。多くの人、マスメディアにとっても『なぜ都知事をやりたいの?』的に。
人は本能的に安全志向だ。安心が好きだ。おそらく、命や身を守るという古代からの遺伝子が関係していそうだが、『分からないこと』には怖さを覚えやすい。松明を片手に真っ暗闇の洞窟には入りたくないけれど、洞窟内の構造が分かっていれば、感覚は違うものになるだろうわけで。
『鳥越俊太郎が都知事で大丈夫だろうか』。ネガティブ視線で眺める人の心理には、理由が分からないゆえの怖さがあるような想像をしている次第だ。具体的政策や実務経験云々よりも大きな存在で。
やや話が脱線するが、企業や店舗が企画、開催するイベントやキャンペーン、諸々のコンテンツも同じことが言える。
『なぜ、どういう理由で、目的で、それをしようとしているのか』を言葉にして、文章にして、見せ、伝えなければ、生活者(お客さん)から良い反応はなかなか得られないからだ。営業、販売攻勢、トークを浴びせられるのも嫌だな的に。
さらに付け加えれば、商品(サービス)もそう。なぜ開発されたのかという経緯やエピソード、想いを言葉や文章にして伝えることが大事だったりするわけで。
ようするに、理由と安心感とは密接に結びついているのだ。
宇都宮氏の出馬辞退もあり、完璧なる野党統一候補となった鳥越俊太郎氏。たしかに追い風が吹いている。与党は与党で小池百合子氏と増田寛也氏による分裂選挙なわけで。けれども、鳥越氏というコンテンツ、ラベルというハード力頼みだけでは苦戦するように思う。個人的には。
さ、元東京都民として、激しく傍観することにしよう。