ここ数日、なにやらネット上が騒がしい。
絵本作家キンコン西野さんのことだが、賛否両論の嵐が吹き荒れている。
周知の通り、この『えんとつ町のプペル』(幻冬舎)は2,000円(税別)する。さらに23万部も売り上げているヒット作だが、ところがだ。
3ヶ月前に発売したばかりのこれを1/19よりネット上で全文無料公開したものだから、他のクリエイターから悲鳴にも似た批判が挙がったわけだ。『価格破壊が起きる、報酬が安価になる、産業が衰退する』的な。
特段、声優の明坂聡美さんとの応酬は激しいものがあったよね。ツィッターでのやり取りで。

いち傍観者としては、2つばかりが印象的だ。
まずは、炎上商法の常連人である西野さんらしいプロモーションだなと。というのは、反対した人も、批判した人も、怒った人も、みんな話題作りの協力者である。
彼はブログ上(1/19)で『お金の奴隷解放宣言』なる言葉を使っていたが、やるなあと。あくまでも想像だが、じゃんじゃん声を挙げてくれというトリガーでもあったのだろう。西野協奏曲なるもの的に。
とはいえ、こうできる人とできない人がいるわけで、彼はできる側、つまり、話題を作れる実力者であるということだ。(やるか、やらないかは、別として)
ま。これもまたネット社会ならではの産物なのだよね。布石からの炎上、その一連はただならぬプロモーションになるという。
つづいて二つ目は、人は自分にとっての価値を見出し、買う、という現象だ。
前述の通り、他のクリエイターの多くは『コンテンツの無料化は産業が衰退し、クリエイターの収入も減る』と異口同音的だが、一概にそうはならない。
というのは、この『えんとつ町のプペル』は無料公開された19日にAmazonの『本の総合ランキング』で1位に上昇した。今日24日時点でも2位につけているが、重版も決まり発行部数は25万部を突破した。
ふむ。無料公開後も紙ベースの絵本は買われているのだ。
その他、無料マンガアプリなんかもそう。ネットで読むだけなら無料なのに、紙の単行本も普通に売れている作品、事例も多々ある。有名どころでは、マンガアプリ『comico』発の『ReLIFE』だろう。(無料マンガアプリは、閲覧数に応じて作家側に広告収入が入るモデルも多いのだが)
ようするに、自分なりの価値を見出したモノを消費するメカニズムが働いた代表的事例とも言えるだろう。
たとえば、作家や原作者を応援、支持したい気持ちで紙ベースを買う人もいるかもしれない。
『えんとつ町のプペル』は紙で手元に置いておきたい。または、子供に読み聞かせるならネットじゃなく紙の絵本の方が相応しい、と感じた人もいるかもしれない。(おそらくだが、ネットで見て、紙ベースの絵本が欲しくなった人は一定数いそうだ)
はたまた、紙のモノに価値を感じる人もいるかもしれない。
あらためてでもあるが、可視化であり、情報を惜しみなく出すとは、プロモーションにとって超絶的だ。
ラジオから流れる曲もそうだし、ピコ太郎ではないがYouTubeと他のSNSとのコンボ効果も計り知れない。
ふむ。生活者が自分なりの価値を見出すには、『知っている、分かっている』が前提だが、あなたが扱う商品(サービス)は、どうプロモーションしているだろうか。
炎上は別にしても、多くの企業(店舗)や人に多くのヒントを与えた『えんとつ町のプペル事例』だとも思う次第である。