劇場公開から2年、レンタルDVDでようやく観ました。
この映画は2012年発表のギリアン・フリンによる同名小説を基にしたサイコスリラー映画なのですが、ちょっと曰く付きです。
このフリンという作家ですが、ミステリー小説の大作家・アガサ・クリスティーの大ファンなのだそうで、この映画のお話は実際に起こったアガサ・クリスティーの失踪事件をヒントにして作られているのです。
そのクリスティーですが『ゴーン・ガール』のストーリーにほぼ近い事件を起こしていたそうで、フリンはファンとは言いながら小説の題材に使ったことはほぼ間違いないでしょう。
さて映画『ゴーン・ガール』では表向きは幸福だと思われていたある夫婦。
妻は聡明で人々からも愛されていたが、夫は不倫して愛人と一緒になろうとしていた。
その夫ニックが愛人と一緒になろうとしていた矢先に、それ以前に気がついていた妻・エイミーが周到な計画の上、突然の失踪をしてしまう。
アガサ・クリスティーも同様の失踪事件を引き起こして、デイリーミラー紙、ニューヨーク・タイムズも一面トップで取り上げ国際的なニュースになったそうである。
当初はクリスティーの小説のための宣伝だと思われていたが、夫アーチーの行状がバレると彼に疑いの目が向けられ始めた。
『ゴーン・ガール』も全く同じで、ニックは警察と過激化する報道からの圧力によって、彼の温厚な人柄のイメージが崩れ始めていくのだ(非常に情けない夫に成り下がってしまう)。
そして夫の浮気と不確かな行動に世間はある共通の疑問を抱き始める。「夫が妻を殺したのではないのか?」と。
ところがエイミーは生きており、殺されたように見せかけていたのはニックの浮気に対する復讐(?)であった。
クリスティーも同様の行動を90年前に行なっていた。
クリスティーは1926年12月イギリス・バークシャー州の自宅から車で外出し姿を消したのである。
車は電気がついたままになって放置されていた(『ゴーン・ガール』も同様)。
そしてヨークシャー地方のハロゲイトにあるホテルに偽名(夫の愛人の名)で滞在し、宿泊費はマネーベルトで出し入れしていた。『ゴーン・ガール』のエイミーもマネーベルトまで同様であった。
ただ、エイミーの場合は宿を引き払う際に同じ宿の客に全額奪われてしまうのだが。
それで無一文になったエイミーは昔の恋人の家に匿われるのだが、夫ニックのテレビ謝罪会見を見るや否やニックの元に帰るため、昔の恋人を無残にも殺してしまう(表向きは強姦され正当防衛でやってしまったと見せかけているが、殺人用ナイフをベッドに隠したり、性器をワインボトルで傷つけたりとエイミーには相当な性格異常があるのではなかろうか)
さて、ニックについては、不利な証拠となった彼女の日記は実はあらかじめ書かれたものであり、自宅の床から拭かれた血、飛び散った血痕と壊れたコーヒーテーブルは、すべてエイミーが失踪当日に、ニックが彼女を殺害する際に争ったように見せかけるために仕組んだものであった。
エイミーは遠く離れたモーテルでナンシー(ニックの愛人の名)と名乗り、外見を変え、ニックが妻殺害で死刑になるのを待ちわびていた(実は本当にそこまで考えていたかはわからない)。
というのも記者会見でニックの元生徒で浮気相手であるアンディが不倫を告白したため不利な状況はいや増しとなってしまったが、敢えてニックはトーク番組に出演し、夫として完璧でなかったことを謝罪し、エイミーに家に帰ってきてほしいと訴える(エイミーの勝ちであった)。
彼の話で世間の印象が変わり始め、エイミーの彼に対する想いが再び芽生え始める。
元愛人を殺害し血まみれで家に迎え入れるニックはさすがにたじろいでいた(精神異常のサイコ女としか見えないから一緒に暮らすのも怖くなる)。
映画の最後、「今何を考えている?」とニックはエイミーに尋ねるが意味深な笑みを浮かべるが、その後の結末は不明である。
なお、クリスティーの場合は失踪から戻り2年後に結局は夫と離婚している。
監督はデヴィッド・フィンチャーが務め、ベン・アフレック、ロザムンド・パイク、ニール・パトリック・ハリス、タイラー・ペリーとキャリー・クーンが出演している。
日本では2014年12月12日に公開された。