今年のブエルタですが、スタート時は参加選手のあまりの豪華さにさすが80周年を迎えただけのことはあるなと思っていました。

しかし、状況は次第に大きく変化していきました。

それがまさに、極め付けの第11ステージで起こりました。

スペインとフランスに挟まれたピレネーの小国・アンドラ公国内で第11ステージの全行程がで行われました。

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アンドラ公国はピレネー山脈東部に位置し、スペインとフランスにはさまれた山がちの内陸国で周りを山に囲まれしかも道路は厳しい高低差があり、複数の谷が刻み込まれている。

そして過去にフランス領であったことから、現在はフランス大統領とスペインのウルヘル司教の二人が国家元首をしているというちょっと変な国である。

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さて、今大会最初の上級山岳ステージ(しかも選手たちの休日明け)となり、1級、1級、1級、超級、2級、1級の順の5つのカテゴリー山岳を通過するいずれも平均勾配10%前後の難コースばかりである。

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ということからしてサバイバルレースになることは必至だし、さらに心配なのは、休息日明けにつまづく選手がことが多いと予想される点だろう。

その心配が見事に的中し、セルジオ・パウリーニョがTV撮影オートバイとの接触で脚を負傷し、レース続行を断念せざるを得なかった。所属チームのティンコフ・サクソは、すでにペーター・サガンがニュートラルサービスのオートバイに跳ねられて、負傷リタイアしている。この日チームは、公開書簡にて、開催委員会ユニパブリックと国際自転車競技連合UCIに対して謝罪と状況改善を求めたばかりの事故だった。パウリーニョの事故直後には、チームオーナーのオレグ・ティンコフ氏がSNSで「大会ボイコットさえ考えている」とまで発言している。

そして、極め付きの惨事になってしまったのがこれだ!

それはスタートからほんの2.5㎞ほど走った地点だったが、今年のツールの覇者であるフルームが落車して沿道の柵と石壁に衝突してしまうという事故を起こしてしまう。

スカイのアシスト陣たちが懸命にリーダーを引き上げ、1つ目の山(1級)は、上りも下りも、必死の追走を続け、2つ目の山の中腹まできて、ようやく、フルームはメイン集団へと復帰を果たすことができた。

フルーム

フルームは「自分がこれまで走ってきたグランツールのステージの中で、きっと、最も難しいものになるだろう」と、休養日に語っていた予言が、ある意味、的中したといえる。



「今日はレースを続けたいという思いからベストを尽くして食らいついた。一日中ずっとそばにいてくれたゲラント・トーマスをはじめ、サポートに徹してくれたチームに感謝だ。明日の朝にスキャン検査を受ける予定だけど、松葉杖なしでは歩けない状態なのでスタート出来るかどうかは疑わしい。」とレース後にコメントしている。

フルーム1

アシストに徹したゲラント・トーマス(イギリス、チームスカイ)によれば、
「フルームは明らかに激しく落車していて、足を打ち付けたと言っていた。脚の調子自体は悪くないと言っていたものの、超級山岳でアスタナのペースアップが始まると苦しみながら脱落。ちょうど自分も脱落しそうな状態だったので、ペースを弱めて彼を待った。」

フルームは総合で7分30秒遅れの15位に沈み、ツール→ブエルタのダブルツール制覇はほぼ絶望的と評されたが、当日起きた事態が報道陣たちにはあまりよくわからなかった節がある。

私は実況中継画面を見逃さなかったが、落車後にフルームが走りながらモトバイクに関する憤懣を罵っていた瞬間を今でも忘れない、そして真相は闇の中なのだろうか。
今年のブエルタは主力選手を大幅に欠き完全な失敗大会だと、あくまで個人的にみて取れてしまったわけである。