19ステージのメインディッシュといえば超級クロワ・ド・フェール峠(登坂距離22.4km、平均勾配6.9%)の極めて長い上りである。

つぼ

19ステージのこの日、ステージゴールまで約60kmというところでクリス・フルームに思わぬトラブルが発生した。ほんの軽いアクシデントだったのだが、マイヨ・ジョーヌが立ち止まっている数秒の間にニーバリが加速をかけたのだ(アクシデント中の際、リーダージャージを攻撃してはならぬないという紳士協定を無視する行為ともいえる)。
そのままニーバリは毅然と突き進み、メイン集団を引き離していき、最終的にはこの日のステージ優勝(アスタナチームとしても悲願だった)をものにした。

それについてニーバリ試合後、「僕だってジロで落車中にアタックされたことがあるし、別にルールで決まっているわけじゃないから」と反論した。それに対して、同じステージの表彰台の裏にてフルームから「スポーツマンシップに反する行いだ」と糾弾されることになる。

さて、翌20ステージのメインディッシュであるアルプ・デュエズを上るということで、ステージは110.5kmという超短距離決戦ということで行われた。
行われた。

らく

この日は、登坂口でキンタナが加速した時に、ちょうどニーバリがパンクしてしまうのであった。
前日は、マイヨ・ジョーヌのメカトラブルの最中にアタックを打ち、フルームからなじられながらも、区間勝利と総合4位の座を勝ち取った張本人なのだが!因果応報ってことだな。

まさに、他人にした事は自分に返ってくると言うけれど……、このパンクのせいで、ニーバリはマイヨ・ジョーヌ集団から置いてけぼりにされたしまうのであった。アスタナチームのアシスト3人が必死に引き上げてくれたが追いつくことはできなかった。


てな珍事もあったけど、過去8回オランダ選手が勝利を手にしてきたことから「オランダ人の山」とも呼ばれるのがアルプ・デュエズそうだが、このところすっかり「フランス人の山」と化しており、2011年ピエール・ローラン、2013年クリストフ・リブロン、2015年の今回はティボー・ピノと3大会で、フランス選手が母国フランスに栄光をもたらしたわけである。

さて今年の熱かった総合勢争い。
前日(19s)にモヴィスターのナイロ・キンタナは、揺さぶりをかけてクリス・フルームを山道で突き放している。フルームにとっては直接的な被害となりえる恐るべきアタックが、フルームの身を襲った。

それはラストの6kmであった、キンタナが力強い加速をあげ始めたのだ。
ここで長いステージの影響だろうか、フルームはとうとうライバルの加速についていけなくなった。
それはこの3週間で初めての現象だった。
キンタナは最終的にフルームから32秒をもぎ取った。
ステージ後のインタビューでキンタナは「でも考えていたほどは、タイム差を縮められなかった。あとたった1日しか残っていない。さらに強くアタックするつもりだし、ステージ優勝もチームで狙っていきたい」と強い意気込みを語っていた、


この日(20s)は、キンタナの「もっと早くからアタックする」との宣言通り、モヴィスターの2人(キンタナ&バルベルデ)は見事な攻撃ぶりを発揮した。
体調不良に苦しむクリス・フルームに、連携プレーで揺さぶりをかけた。

「クロワ・ド・フェールでは大きなリードが奪えなかった。だから最終峠で全力を尽くすしかなくなった」ということで、結果的にはキンタナがフルームに1分12秒差にまで追い詰めた。



しかし、3週間かけて十分すぎるほど確保していたタイム差があったが、前日までならキンタナの加速には自ら対応してきたフルームだったが、この時はチームメートに穴を埋めさせ、なんとかフルームを救ったといえ、王者フルームはマイヨ・ジョーヌを守りきったのである。

レース後フルームは、「2回目の休養日から、ちょっと気管支炎気味で、咳も出ていた。ここ数日間は少し調子を落としていた」と語っていた。

しかし、この2日間は素晴らしい激闘で見応えは十分であった。