巷ではオーディオに掛けるべきコスト配分をスピーカー:アンプ:プレーヤー=5:3:2と云ったりしますが,これは音質に与える影響が最も大きいのはスピーカーで,次いでアンプ,それらに比べるとプレーヤーの影響は小さいのでというのがその理由のようです. 確かに,スピーカーやアンプに比べればプレーヤー間の音質の差は小さく,実際にCDP-555ESDとDCD-1650AZとの差が判らなかったこともありましたが,それでも音の源流たるプレーヤーは決して疎かにしても良いものではないと,うしおは考えます. 
とは云うものの,プレーヤーにコストを5掛けるべしと言う気もないのですが,価格ではなく正しく音質で選べば,コスト配分が2どころか1未満でもハイエンド・オーディオが十分に実現出来ることがあるようです. 

TEACのCD-P650. Kenzoさんをして「溢れる躍動とゴージャスな音色で、図抜けている.」と言わしめるCDプレーヤー. CD3300を凌駕するというその実力が知りたく,購入することにしました.
2010年発売,定価は47,250円(税込み,のちオープンプライス)でした.
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ヤフオクで中古品を落札. 送料込でも1万円ちょっとでした.

本機はiPodの再生やUSBメモリへの録音に対応したフルサイズCDプレーヤーで,D/AコンバーターにはBurrBrown製「PCM1791A」を採用しています. このPCM1791Aは電圧出力タイプの24bitD/Aコンバーターで,I/V変換しないで済むため,D/A変換したアナログ信号をそのままダイレクトに出力できます. しかしその反面,電流出力タイプのD/Aコンバーターより外乱ノイズに対しては敏感 というデメリットがあるようです.

取り敢えず,開腹.
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予想外に中身が詰まってます. 

かなり電源部に注力しているようで,大型のEI型電源トランスのほか,小型のトランスが基板上に乗っかっています. また,外部電源コードのほか,内部の電源コードにもノイズフィルターが噛ませてあり,外乱ノイズ対策に気を配っているようです.
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D/Aコンバーターには前述のように,BB社の8オーバーサンプリング・デジタルフィルター内臓の24bitDAC「PCM1791A」を搭載しています. このPCM1791Aは電圧出力タイプのためI/V変換回路が不要で,非常にシンプルな構成のオーディオ回路となっています.
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CDピックアップ・ドライブユニットですが,メカベースは鋼板製で見た目よりも頑丈です.  また,ピックアップの方はサンヨー製の「SF-P101N」に良く似ていますが,未確認です.
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取り敢えず4thシステムにつないで音出ししてみると,確かに音場が広く,ハイスピードで高解像度. しかし,やや高音域に荒さが感じられ,なまくらな耳には些か刺激的すぎる印象. いくら中古品とは云え,長らく使われていなかったのかも知れず,じっくりとリエージングさせたのち試聴することに. 試聴盤にはBill Evans Trioの「Waltz For Debby」,Halie Lorenの 「After Dark」,渡邊美和さんの「Natural Voice Ⅱ」などを用いました.

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で,その音質ですが,

初めてCDの音をすべて聴いたッ!!
ヽ(゚Д゚;)ノ!!

と思わせるものでした.

他機を置き去りにする圧倒的なスピード感,すべてを照らす高い解像度,そして広く立体的でダイナミックな音場と,音が輪郭を持って手で触れられるかのようです. しかも,位相がきっちりと揃っているにもかかわらず低音の量感も豊かで,ノリが良いです. ハッキリ言って,これまで聴いていたCDの音は原音からかけ離れた,間引かれて塗り潰され付け加えられた音ばかりだったと思わせます.
しかし,本機はCDに録音された音を忠実に再生するため,例えば女性JAZZヴォーカル盤では,声に艶や潤いを乗せて成熟した女性の艶めかしさや嫋やかさを表現するなどと言ったことは出来ません.

本機は原音再生に特化した極めてトランジェント特性に優れた機体ですので,音楽の持つ「雰囲気」を求める方にはおススメできない,いや寧ろそういう方は聴くべきではないプレーヤーです.
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本機の最大の特色は,量感豊かで輪郭のしっかりとした低音が遅れることなくハイスピードに出てくることです.
もし本機をつないで締りのない,ぼやけた音がするなら,それはシステム側の問題だと思います.

本機を生かせないシステム例
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スピーカーを壁に寄せてはいけません.