1988年度のステレオサウンド誌コンポーネント・オブ・ザ・イヤーを受賞したXL-Z711の音はまさに「美音」で,その後,VictorCDプレーヤーの音がどのように発展したのか気になり,某オクにて入手したもの.
発売年,価格ともに不明です.
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少々傷は多いですが,某オクにて完動品を入手しました.

K2インターフェイスの効果か,XL-Z711の持つ美しくきれいに響く高音域,艶やかでありながらも透明感のある中音域,輪郭がハッキリとした芯のある低音域がとてもお気に入りで,それをさらにブラッシュアップさせたらどんな音になるのか非常に興味があるのですが,その後Z711の後継機は終に現れず,90年代半ばにはVictorのフルサイズCDプレーヤーはエントリー機かハイエンド機かの状態になってしまいました.
そんな中,現われたのが横幅380㎜という微妙なサイズのハイコンポ“HMVシリーズ”で,本機はそのHMVシリーズの中核を担うCDプレーヤーとなります. 本機最大の“ウリ”はK2インターフェイスを発展させた“20bitK2Processing”で,DENONのALPHA ProcessingやPioneerのレガートリンク・コンバージョンなどの波形再現技術ではなく,デジタル信号の精製・再構築技術とも云えるものです.
今回入手したのは完動品なのでバラす必要はありませんが,取り敢えず観察してみることに.

背面と底面です.
背面向かって左側がデジタル出力(COAXIAL,OPTICAL),右側がアナログ出力のRCA端子と,左右で隔てられています. 底面は銅メッキシャーシに「Z-BASE」と名付けられたエンジニアリングプラスチックが装着されています.  ちなみに,インシュレーターは大型3個と小型2個の5点支柱のように見えますが,小型の2脚は地に着かず,実際は3点支柱です.
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この頃の機体で銅メッキシャーシを採用してるなんて,如何にもいい仕事してる気がしてきますね. 
ネジも銅メッキされてますが,それにしてもえらい数です.

断面です.
サイドパネルはプラスチック製ですが,強度と制振に配慮されているのが判ります.
また,フロントパネルからボンネットにかけてはアルミの一体成型品です. 厚さも3~5㎜程度はあり,リブも入って組み立てた時の強度は非常に高い感じを受けました.
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サイドパネルとボディは制振材をかませて取り付けられており,そのうえネジも樹脂製のワッシャーをかませて取り付けられている. それにしてもこのアルミパネル,どのようにプレスしたんだろう??

いよいよ内部です.
向かって左側がデジタル/コントロール回路,左側がオーディオ回路で,それらを隔てるように中央部にCDドライブユニットと電源部が配置されています.
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幅380㎜のサイズにぎっしりと詰め込まれています. また,主要コンデンサーのトップには,銅箔が貼られています.

電源部です.
電源トランスはZEBRA製で,横に見える電解コンデンサーにはELNAの50V,2,000μFが2本使われています. 
また,電源コードには,ノイズフィルターとしてフェライトコアが装着されています.
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デジタル回路/コントロール回路.
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右上の小さいチップはYAMAHA製のDigital audio interface Receiver「YM3436D」.
右下の大きいチップはVictor製の「JCE4315」.おそらく,20bit拡張機能を持つデジタルフィルターだと思うが,そうするとXL-V1A-Nは20bitデジタル出力が可能??

20bit K2 PRCESSING回路
もとはXL-X711に搭載された「K2インターフェイス」で,本機が搭載する「20bit K2 PROCESSING」はその発展型です. 簡単に概要を説明すると,CDの16bitデジタル信号を20bitに拡張して取り込み,取り込んだ「0」と「1」のデジタル信号から新たにデジタル信号を生成して専用のマスタークロックで整えてD/Aコンバーターに送り出すことによって,元のデジタル信号を汚染させていたリップルやジッターの影響を取り除くというものです. 
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右:このカバーの中に20bit K2 PROCESSINGの回路が収まっている.
左:その回路基盤裏に実装されていたチップ. 驚いたことに,こちらにも「JCE4315」が実装されていた.
   因みに,D/Aコンバーターは確認出来なかったが,Victor製の20bitD/Aコンバーターを搭載しているらしい.

オーディオ回路
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しっかりとしたディスクリート構成となっており,オペアンプにはJRCの5532Dが使われている.また,20bitK2PROCESSINGと電源回路との間は銅箔で遮蔽されている. 下の銅箔に覆われた四角いのはリレー.

CDドライブユニット
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ピックアップはOPTIMA-6S(?),スライド機構はギア式. 

一通りチェックも終わり,ピックアップレンズのクリーニングも済ませたので,いつものように3rdシステムに組み込みました.
で,その音質ですが,透明感があり高音域が気持ちよく伸びる,如何にもVictorのCDプレーヤーらしいトーンです. XL-Z711ではあまりにも高い透明感からやや冷たく感じられるところもありましたが,本機は程よく艶ものって温かみがあり,また低音域は膨らむ傾向がなく芯の通った引き締まった低音を伝えてきて,とてもバランス良く仕上げっています. 一方,解像度・スピード感がとも高く,シンバルやハイハットの音がリズムよく伝わり,左右の分離や奥行き感もしっかりと表現できています.

これがフルサイズコンポだったらかなりの人気となっていたでしょうに,惜しいことです.
不遇の良将ですね.

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Pioneer A-04との組み合わせは,高音域の美しさが一層際立つ.
DCD-1650AZはARに比べると音のバランスが随分と良くなった印象を受けたが,本機と比べるとそれでもやんちゃだ.

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ミニコンサイズと侮ることなかれ! 「ビクター・トーン」を楽しめる貴重な1台です.