三女のけいれん
三女(7才)が発熱したので、一旦出勤していた僕はとんぼ返りで家に戻り、在宅勤務に切り替えた。
妻はパートがあり、人手不足で休めなかった。
最初、三女は鬼滅の刃のアニメをみていて、元気そうに見えた。
そのうちつかれたようで横になり、眠りについた。
異変が起きたのは昼頃である。
目覚めた三女に、お茶を飲ませようとしたら、顔をしかめて拒んだ。
どうしたんだろう、と思う間もなく、三女は僕に抱きついてきて、けいれんが始まった。
びっくりである。
三女の手足が、激しく細かく揺れ動く。今まで聞いたことのないような声で、三女が泣き叫ぶ。
絶叫である。
これが妻が心配していた熱性けいれんか。おちつけおちつけ、と自らに言い聞かせる。
三女を抱きかかえつつ、スマホで対処法を調べる。
すぐに救急車を呼ぶ必要はないらしい。5分様子をみれば収まるらしい。横にしてあげたほうがいいらしい。
三女を抱いたまま、身体をふとんのうえに横たえる。
けいれんは続く。だいじょうぶだよ、と声をかけ、背中をさする。内心、不安でいっぱいである。
徐々にけいれんがおさまる。まだ三女はぼーっとしているが、その瞳に意識がもどる。
かなり汗ばんでいるので、湿らせたタオルで顔と身体をふく。
服を着替えさせるとき、三女自ら袖に腕をとおしたので、少し安心した。
熱を飛ばそうとうちわで三女をあおぐ。アイスノンも用意する。
しばらくふたりで横になって、僕は三女の頭をそっとなで続ける。
次第に三女のまぶたが重くなり、やがて寝息をたて始める。
ふう。
やがて帰宅した妻に、ことの顛末を話した。妻は三女の熱性けいれんを経験したことがあり、せやねん、こわいねん、と応えた。
ママが帰ってきたよ、と三女を抱き上げようとしたら、キックをしてきた。
笑ってしまった。
ママがいない夜
ゴールデンウィークに家族全員で、僕の実家に帰省した。
しかし、妻はパートを休めなかったので、一足先に我が家へ帰った。
娘たちは、置いていかれたような気持ちになったようだ。
夜、次女が、パパいっしょにねてくれるよね?と言うので、もちろん、と答えた。
僕と娘3人、ならんで布団にもぐりこむ。
久しぶりだ。
というか、妻がいない状況では、初めてかもしれない。
僕の両隣には、次女(10才)と三女(7才)がいる。
ふたりと手をつなぐ。ふたりとも手があたたかい。
長女(13才)が、何度も寝返りをうつ音が聞こえる。
やがて3人とも、すやすやと寝息をたてはじめる。
僕だけ眠くならない。
日中、ずっと遊んでいたので僕もかなり疲れているはずなのに。
暑さのせいだろうか。三女のおでこに手をあててみる。汗ばんでいる。
身体を起こして、窓を少し開けた。ひんやりした空気が入ってくる。
豆電球がまぶしいのかもしれないとも思い、消して真っ暗にした。
結局、眠れたはずだが、次女の足が乗っかってきたり、三女が咳き込んだり、どうもちゃんと眠れた気がしない。
朝も5時半ぐらいに目覚めてしまった。
我が家に帰宅後、妻にそのことを話した。
妻は、当たり前だという表情で、母親は熟睡なんてできへんねんで、と言った。
結婚して17年
結婚記念日。
毎年のことではあるが、いい天気である。公園の新緑が明るい。
午前中、三女(7才)と公園に遊びにいく。
すでに友達と遊んでいた次女(10才)と合流。次女はレジャーシートをしいて、ファミチキにかじりついていた。
日差しが強い日だったので、水遊びをした。
水風船をつくって投げ合ったり、水鉄砲で打ち合ったり。
ちなみに長女(13才)は、家でハイキュー!!のアニメを観ている。
午後、三女とケーキを買いにでかけた。歩きである。
ツツジがどこも満開。
「パパ、もも色のツツジのみつは、いちばんあまいんだよ」と三女が教えてくれた。
じゃあ赤と白はどっちが甘いの?ときくと、わかんないとのこと。
お目当てのケーキ屋さんは少し遠い。僕と妻が結婚当初に住んでいたあたりにある。
ガトーショコラ、イチゴタルト、バナナタルトを買った。
ガトーショコラはミニサイズではあるが、ホールケーキを購入した。三女が、じっとそれを見ていたので。
帰りは少し遠回りして、昔、初詣に行っていた神社に立ち寄った。
三女は、本当にこっちが近道なの?なんて言っている。お詣りする三女の後ろ姿を僕は見つめる。
あの頃、僕らはふたりきりだった。
帰り道、ついに三女が、つかれたつかれた、と言い出した。
たしかに暑い。
少しだけおんぶしてあげた。三女が、僕の背中にぺたんとはりつく。
往復で1時間は歩いただろうか。
帰宅してからも、ママつかれた~と言っている。
妻も、つかれたよねぇと三女をぎゅっとハグしている。
夕食後、ケーキを食べる。最近あまり行かなくなっていたお店だったが、近場のケーキ屋さんよりずっとおいしい。
「タルトは圧勝やわ!」と妻。