20090220 日本経済新聞 朝刊

バラマキ懸念も
 農林水産省は生産調整(減反)などのコメ政策を見直すのにあわせ、生産調整に参加する農家の所得補償を拡充する検討に入った。現在の所得対策である「水田・畑作経営所得安定対策」を拡充したり、新しい交付金を設けたりすることを検討する。ただ財務省は必要な財源の増加に慎重で、政府内の調整が難航する可能性もある。
 農水省は五年に一度の農政の基本計画の見直しに着手している。石破茂農相は四月にも農政改革の方向性を示す考えで、所得対策の見直しも盛り込む見通しだ。
 政府は農家の収入補てん費として、二〇〇九年度予算案に七百五十八億円を計上した。農水省は一〇年度に向け対策費を増額したり、交付金を創設したりする方針。具体的な制度設計や拡充の額などは今後詰める。
 現在、コメの生産調整には約三割の農家が参加せず、不公平感が強い。このため農水省は農家が減反するかどうかを自主的に判断する「選択制」への移行などを検討している。選択制にするとコメが大量に生産され、米価が下がる可能性があるため、農水省は生産調整に参加した農家への所得補償を手厚くし、経営を安定させる考えだ。
 農水省は豊作でコメ価格下落の可能性が大きくなった〇七年、〇八年産と緊急に備蓄米としてコメを買い入れた。その結果、価格は下げ止まったが財政負担は増えた。
 生産調整について選択制に移行しない場合でも、豊作時に政府が緊急にコメを買い支えることをやめれば、米価が下がる可能性がある。農水省はこうした場合にも農家への所得補償を拡充する必要があるとみている。
 「コメの価格維持」から「農家への所得補償」への移行は、政府の経済財政諮問会議の民間議員も提案した。高いコメを買う「消費者負担」から、値段が下がる代わりに税金で所得補てんする「納税者負担」の色彩が強まることを意味する。
 自民党農林族からは米価維持を続けながら、所得補償を拡充すべきだとの声も上がる。だが野放図に所得補償をすると、財政負担が膨らむうえ農家へのばらまきになりかねない。農家が生産性を高める意欲をそぐことにもつながる。例えば米価が下がるなど、消費者・納税者にも利点があるように制度を変えないと国民の理解は得にくい。
 民主党は農家への戸別所得補償制度を打ち出している。農家の生産コストと販売額の差額を補てんする仕組みだ。農水省は過去の収入額と比べて減った分を補てんし、民主党案と基準が異なる。民主党案が小規模な農家まで幅広く対象にする見込みなのに対し、農水省は原則として大規模農家を中心に補償したい考えだ。

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