20090126 日本経済新聞 朝刊

働き盛り、節約から我慢へ
 個人消費は不振だった年末商戦の後遺症が癒えず、年が明け厳しさが一段と増してきた。雇用や賃金の不安定さという景気要因だけでなく、生産年齢人口の減少という構造要因も向かい風だ。その逆風は今年さらに強まるのか。クレディセゾンの林野宏社長にクレジット産業からの視点で予想してもらった。
 ――百貨店売上高の惨状が象徴するように消費は萎縮しています。
今年前年割れも
 「個人消費に占めるクレジットカード取扱高の割合は約一二%で、米国の半分程度。その推移は階段を落ちていくような感じだ。当社の取扱高は二〇〇七年度が前年度比一二%増、〇八年度上期は七%増だったが、昨年十二月は横ばい。今年は前年割れもありうる」
 「読み取れるのは消費のサービス化だ。取扱高をモノ、サービス、海外での利用――に三区分して各比率をみると、昨年十一月はモノが六七・八%で前年同月比一・一ポイント低下したのに対し、サービスは二八・四%で一・七ポイント上がった。美容やエステティックが増えているうえに、公共料金や携帯電話料金の支払い手段としてカードの利用を広げた効果が出た」
 ――モノの売れ行きに明るい面は?
 「最終消費支出の長期的な経年変化分析でも、モノの不振ははっきりしている。〇六年度の支出項目を十年前と比較すると『衣服・靴類』は約四三%減、『家具・家庭用機器など』は約二六%減。これに対して『通信』は約七〇%増、『保健・医療』への支出は約三九%増えた。やはり洋服や家具は飽和状態にある。百貨店は化粧品など一部に好調な品目もあるが、伝統的に服や家具の品ぞろえで勝負してきたのだから不振は当然だ。そうしたなかでもデベロッパー型の大型商業施設、ユニクロなど一部の衣服専門店、それにホームセンターでのカード利用は増えている」
 ――世代別にみた動向はどうですか。
 「ざっくりいうと、若い世代は伸びているが三十―四十代の働き盛り世代は縮んでいる。五十代になるといくらか持ち直す。二十代はワードローブを満たすために洋服や靴を買いそろえ、三十歳をすぎると結婚や出産、教育や住宅ローンに費用がかさみ、自分の服どころではなくなる。三十代の消費は節約の域にとどまらず我慢しているという印象だ。買わないという意志を固めているといっていい。だが我慢にも限界がある。この世代の感性を刺激するヒット商品が生まれれば局面が変わるのではないか」
規制でブレーキ
 「もう一つの特徴は、小口融資であるキャッシングの利用が大きく減る一方、買い物に際して一回の支払額を一定に保つリボルビング払いの利用が増えている点だ。分割払いの拡大には一定の消費下支え効果がある」
 ――政府は無収入などの専業主婦や学生が持つカードの利用限度枠を制限する方針です。
 「家計をあずかるのは大抵は主婦。食品や家庭用品だけでなく日ごろの買い物について買う買わないの意思決定権を握っているのに、なぜカード利用を制限しようとするのか理解できない。建築基準法の見直し、消費者金融の上限金利規制、労働者派遣法の改正案などここ数年は規制改革の巻き戻しが続いている。カードの利用規制もその一つといっていい。公が個人のカード利用を制限すれば消費にブレーキがかかるのはあたりまえだ」
 「個人消費は円高で海外に流れ出している。国を開いて多くの外国人が日本で買い物や旅行を楽しむ仕組みづくりを停滞させてはならない」
(聞き手は
編集委員 大林尚)
 りんの・ひろし 西武百貨店では宇都宮店次長。経済同友会副代表幹事。66歳。

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