20090125 日本経済新聞 朝刊
先進医療にも備えられます――。こんなうたい文句の医療保険が加入者数を伸ばしている。公的医療保険の対象にはならない「先進医療」について、民間医療保険を使ってどのように備えるかをまとめた。
肝臓がんを患う千葉県在住の坂井貴志さん(69、仮名)は二〇〇八年十二月、「固形がんに対する重粒子線治療」を受けた。費用は三百十四万円と高額だったが、「手術に比べて体への負担が少なくて済んだ」と話す。
販売目標上回る
坂井さんが受けた治療は「先進医療」の一種。先進医療とは大学病院などが実施している先端的な医療のうち、まだ公的医療保険の対象にはならないが、保険を適用すべきか検討段階にある医療。一月五日現在、厚生労働大臣が認めた先進医療は百三種類ある。
費用が高額になりやすいのはがんの治療だ(表A参照)。中でも坂井さんが受けた重粒子線治療は、先進医療の中では最高額の部類に入る。
公的医療保険の対象となる医療(保険診療)とそうならない自由診療を両方同時に受けると、すべての費用が患者の負担になる。だが先進医療の場合は、保険診療と一緒に受けると、先進医療部分のみが保険適用外になる(図B参照)。
先進医療の費用は、通常一カ月に自己負担する医療費が約八万円を超えると、払い戻しを受けられる高額療養費制度の対象にもならない。坂井さんは自らの蓄えから、三百十四万円を支払った。坂井さんはがん保険に加入しており、この保険から先進医療について保険金を給付してもらえるかを確認している最中だ。
最近、先進医療にかかる費用について保障する民間医療保険や特約が増えている(表C参照)。損保ジャパンひまわり生命保険が〇八年八月に発売した「健康のお守り」は特約で先進医療に備えられることを売りに、発売から半年足らずで初年度販売目標を上回る十一万件超の加入申し込みがあった。こうした保険に加入していれば、費用を保険金で賄える可能性がある。
このような保険に入るべきか。ファイナンシャルプランナー(FP)の清水香さんは「高額療養費制度や企業の福利厚生などで負担は軽減できるので、貯蓄があれば民間医療保険は不要なことが多いが、先進医療の備えについてはその例外」と話す。医療保険の加入者からも「公的医療保険では賄えない先進医療に不安感を持ったので加入した」(福岡県の五十代の男性)との声が上がった。
先進医療の費用を保障する保険に加入する際は(1)保険料の設定方法(2)給付の上限額や回数制限など保障範囲(3)通院でも支給されるか(4)交通費の支給があるか――の四点で比較しよう。
まず保険料負担から見てみよう。アメリカンファミリー生命保険(アフラック)の「がん保険フォルテ」など終身保険に先進医療の保障が付くタイプは、加入時の保険料がそのまま変わらないため生涯を通じての保険料が比較的安いのが特徴だ。
ただ「医療制度や技術が変われば保障が陳腐化するため、内容の定期的な見直しは必要」(清水さん)な点には注意しよう。
一方、一定期間ごとに保険料が上がるタイプもある。セコム損害保険のがん保険「メディコム」の場合、三十代の男性では月千円台の保険料が七十五歳以上の男性では一万―二万円台になる。
内容変更に注意を
保障内容はどうか。基本的にはがん保険の場合、がんにかかわる先進医療が対象。医療保険は先進医療すべてを対象にする商品が多い。注意が必要なのが、先進医療は保険適用になったり、追加・廃止されたりなど、内容が随時変わっている点だ。保障内容自体もその変更に対応し変わる商品を選んだ方が新しい医療を受けやすい。
そのほか、保障内容を見るときに注意したいのは、入院しなくても保険金が下りるかどうかだ。先進医療の中には通院で受けられる治療もある。一部の商品では、一泊二日の入院が保険金給付の条件となっている点にも注意しよう。
また、三井住友海上きらめき生命保険のように交通費を保障内容に含める商品もある。先進医療を実施する医療機関は限られ、通うのに交通費がかさむ場合がある。「特に地方に住む人は交通費が支払い対象になるかも一つの選択基準」(FPの竹下さくらさん)だろう。ただ入院給付金や一時給付金などで賄うこともできるため、給付額全体や貯蓄などで対応できるなら必須とまではいえない。
保険金額について見ると、費用の実費を給付する保険と一定額を給付する保険に分かれる。前者で特に充実しているのは「メディコム」で、無制限に実費を給付する。損保ジャパンひまわり生命や三井住友海上きらめき生命の商品も一千万円の上限はあるものの実費を支払う。
一定額を給付する保険の給付額は、商品によって差がある。アフラックのように高額な技術には実費に近い額を給付する商品もあれば、日本生命保険のように、入院給付金の二十倍が上限になる商品もある。
それでは先進医療に備えようとしたとき、どんな保険を選んだらいいのか。『生命保険の罠』の著者で、個人の保険相談に応じる後田亨さんは「心配性でお金のある人に向く商品」として、保険料は割高だが無制限に実費が給付される「メディコム」を挙げる。
一方、月々の保険料を抑えつつ先進医療にも対応できる商品の代表例として、竹下さんは三井住友海上きらめき生命や損保ジャパンひまわり生命の商品を勧めている。
(小林由佳)
私たちが先進医療を受けたり、先進医療を対象にした医療保険を必要としたりする確率はどのくらいあるのか。
厚生労働省の調査によると、二〇〇六年七月―〇七年六月の一年間に日本全体で一万四千百七十九人が先進医療を受けた。各種のがん治療のように費用が百万円を超える件数は少なく、十分の一以下の約千三百件だった。
アメリカンファミリー生命保険の場合、がん保険全体では一日あたり約千件に保険金を給付している。だが先進医療について給付したケースは、過去八年間で六百六十九件にとどまった。
このように過去の実績を見る限りは、先進医療を受けて「医療保険から給付を受ける確率はきわめて低い」(鈴鹿医療科学大学の永田宏教授)といえる。
東京大学医学部付属病院の門脇孝副病院長は「先進医療の利点は治療時の身体的な負担が軽減されたり、治癒率が比較的高かったりする点にある。大部分の先進医療には代替的な治療法がある」と話す。先進医療以外の治療法がないという疾患は少ない。こうした先進医療の特性を理解した上で保険を利用しよう。
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