20090123 日本経済新聞 夕刊

 JTBは四月から「JTB旅カード」を発行する。新しいクレジットカードだが、旅行積立の機能「たびたびバンク」がついているのが特徴だ。
 銀行が発行するキャッシュカードとクレジットカード一体型に似たカードといえる。預け入れた資金に付く実質的な金利は年一・五%と、銀行の普通預金より大幅に高い。
 「利便性を上げて旅行商品を買う顧客に利用してもらう」。サービスを手がけるPLUS FSチームマネージャーの山村晋一(48)は強調する。
 「たびたびバンク」の原型は一九八〇年代の旅行積立。満期が来ると旅行商品が買える旅行券がもらえる仕組みだった。
 二〇〇三年に貯蓄商品に改組した。資金を預け入れて、満期になるとサービス額を上乗せした額で旅行商品を買えるようにした。サービス額が実質的な利息になる。
 いつでも預け入れできるフリープランは普通預金のイメージで、金利は年一・五%。毎月一定額を積み立てる定期積立プランは定期預金がモデルといえ、金利は年一・七五%だ。
 原則として解約はできない。使い道はJTBの店舗での旅行商品の購入に限られるが、JTB以外の旅行商品にも使える。JTBで何度も旅行商品を買ってもらおうと、「旅」と「度々」をひっかけた「たびたびバンク」と名付けた。
 もともと会社の財務戦略の意味合いもあった。JTBは長期借入金はないが、余裕資金は手元に置いておきたかった。いまや余裕資金の三分の二程度をたびたびバンクで賄っている。
 顧客の囲い込み効果も大きい。競争の激しい旅行業界だけに顧客の継続率は三割程度。たびたびバンクで原資を固定すれば継続率は間違いなく上がる。たびたびバンクの継続率は六〇%近い。
 山村は八四年にJTBに入社。京都支店を経てTRS(トラベル・リレーテッド・サービス)営業部でかつて旅行積立の販売促進などを手がけていた。
 同社は旅行に関連している金融商品に注力する。〇八年四月にその企画立案を担うPLUS FSチームを設け、山村はそのリーダーを務めている。
 力を入れているのはサービスの強化。旅カードに組み込むほか、今月二十日からは「たびたびバンク」でたまったお金をJTBのインターネットを使った旅行商品の購入に充てられるようにした。店だけでなくネット決済対応でも預金商品に近付けた。
 「高齢者にとって、旅行は貯蓄の重要な目的の一つ。金利が高く、ためた資金をほかの目的に使ってしまうことがないのも魅力になる」
 金融機関は富裕層サービスの一環として、JTBと組んで旅行の紹介などをしている。それに対して、旅行のプロが金融機関をはるかに上回る金利を提示し、利用者はすでに十六万人に上る。旅をめぐる競争の激化は、利用者には朗報だ。
=敬称略
(編集委員 太田康夫)

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