20090104 日本経済新聞 朝刊

 住宅ローンについては、主に二つの要素を頭に入れる必要がある。金利情勢と、大幅に拡充される方向の住宅ローン減税だ。
 住宅ローン金利は現在、日銀の金融緩和策によって低下しており、特に変動金利の低さが顕著だ(グラフC)。景気の低迷局面がすぐには終わりそうになく、金利が上がる公算は当面小さいとみられることから、変動ローンの利用が増えている。住宅金融支援機構の調べでも、最近では三六%の人が借りている。この比率は一年前の倍に近い。
 しかし住宅ローンは三十年など長期間借りる商品。二十―三十年後の経済情勢は予測がつかない。過去の例をみても、約十八年前と約二十五年前に、変動金利が八%台だったこともある。低めの変動金利を前提に返済計画をたてると、将来困難を来すリスクもある。
 「変動金利が上がったときに固定に変えればよいではないか」との反論も出そうだが、実際にはそう簡単ではない。固定金利に影響を及ぼす長期金利(国債の利回り)は経済・金融情勢の先行き見通しに左右されるため、変動金利が上がり始めたときには、固定金利は既に先行して上がっていることもあり得るからだ。
 こうした事情から、長めの固定金利期間選択型(一定期間固定でその後金利を改めて決定)や全期間固定型に安心感があるのも事実。固定金利は変動金利と比べると高いが、歴史的に見れば低い。「いま新規で借りる際には変動金利は選択肢から外していい」(ファイナンシャルプランナーの深田晶恵さん)との指摘もある。手元資金が豊富でいつでも繰り上げ返済ができるような人は、思い切って変動を選ぶ手もあるだろう。
 もう一つの着目点である住宅ローン減税の規模は現在、最大百六十万円。与党は〇九年度税制改正大綱にこれを一般住宅の場合は五百万円、長期優良住宅は六百万円とする拡充策を盛り込んだ。留意したい点が二つある。
 まず、すべての人が減税の恩恵を目いっぱい受けられるわけではない。一般住宅の場合、十年間にわたって年末ローン残高の一%を所得税などから差し引ける仕組みだが、毎年末の残高が五千万円以上あり、かつ減税規模に相当する税金の支払いがあることが条件になる。多くの人にとって実際の減税規模は五百万円より小さくなりそうだ。
 また、住宅ローン減税は時限措置だ。一般住宅で五百万円の最大減税規模が適用されるのは、〇九年と一〇年に入居した場合。入居が一一年なら四百万円、一二年なら三百万円、一三年なら二百万円と、一年たつごとに最大規模は百万円ずつ減る。かといって急いだ方が得とは限らない。
 単純計算だが、一一年まで待って減税規模が百万円縮小したとしても、その間に家の購入価格が百万円超下がるなら、待った方が得だ。地価は下落傾向が続いているが、景気の悪化で〇九年以降さらに下がるかもしれない。ローン減税利用の損得はそうした要素も合わせて考えるとよいだろう。
(編集委員 清水功哉)
 〇九年も、株式・為替相場の不安定な地合いや先行きの不透明感は簡単には消えそうにない。当面はお金を銀行の定期預金など元本保証のある国内の商品に預けておこうと考える人も多いだろう。
 表Aに現時点で比較的金利が高い定期預金を挙げた。キャンペーンとして提示している銀行だと期限がある。個人向け国債の利率(〇八年十二月募集の五年物で年〇・八%)より有利で、元本保証商品なら、こうした銀行の方が有利だ。民間銀行の預金は、国債とは異なり経営破綻の恐れがあるが、預金保険制度により元本一千万円までとその利息は保護される。
 預ける期間はどれぐらいがよいか。期間が長い方が金利が高いが、遠からず金利が上がると判断するなら、現段階では短めの六カ月―一年物に預けておく方がいい。満期時に長めの定期預金に預け直す選択肢を残しておく方が、金利上昇のメリットを享受できる可能性があるからだ。
 ただ、日銀は企業の資金繰りを支援するため、金融緩和姿勢をさらに強めそうだ。「従来は買い入れなかったような資産の購入によるバランスシートの拡大(量的緩和)が考えられる」(BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミスト)といった見方も多い。目先の利上げ予想は皆無に近いので、二―五年といった期間の長い預金も選択の対象になり得る。
 景気の低迷や金利の低位安定が五年後も続いているとみるなら五年物、そこまで長引かないとみるなら三年物などを選び、それぞれで金利が最も高い銀行を選ぶと得だ。三―五年後の金利予測に迷う場合は、とりあえず五年物を選び、三年後に金利が上がった場合は解約し、改めて預け直すといった方法も可能だ。その際には、中途解約時の「罰則金利」があまり低くない銀行を選ぶ必要がある。
 表Bは、表Aで挙げた商品の五年物にいま預け、三年後に途中解約した場合にどうなるかを示す。日本振興銀行などはかなり低い金利を適用されるが、新生銀行やオリックス信託銀行はそうでもない。特に新生銀は当初の一・七〇%が一・三六%に下がるだけ。最初から三年物に預けても一・四%だから、「罰則」は小幅といえる。
 金利が中長期的に低位で推移するとの見通しに自信がある人は、最初から金利が高い日本振興銀行の五年物などに預けるのがよい。一方、金利の先行きに不透明感を覚える人は、金利はやや低くなるが、とりあえず新生銀の五年物に預け、三年後に金利が上がっているようなら中途解約して預け直すといった対応をする手もありそうだ。経済情勢の先行き不透明感が増す中、それぞれの金利観が厳しく問われる年になりそうだ。
 景気の急速な悪化が家計に影を落とす中、二〇〇九年が幕を開けた。金融市場の混乱が実体経済に悪影響を及ぼす厳しい局面は今年も続きそうで、家計はどう対処したらよいか。「マネー生活面」で預金や住宅ローンなど個人の資産と負債、「投資入門面」で株式相場、「くらし安心面」で年金など社会保障の行方をそれぞれ展望した。


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