20090103 日本経済新聞 朝刊

 主要企業の経営者とエコノミスト二十人の景気見通しでは、二〇〇九年度の実質国内総生産(GDP)が前年比〇・八二%のマイナス成長に落ち込んだ。回答者の九割がマイナス成長を見込み、プラス成長を予想する声は皆無。世界的な景気後退が企業部門を直撃。その影響が雇用不安などから家計にまで広がって、日本経済は厳しさを増すとの見方が多い。
 〇九年度の成長率予想をマイナス二%と、最も深い落ち込みを見込む大和総研の田谷禎三特別理事は「日本経済は外需依存体質が強まり、海外の景気悪化の影響をまともに受ける」と指摘する。
 回答者の多くが警戒するのは米国をはじめ海外景気が一段と後退することだ。「米国の金融危機は米国家計の借金体質を直撃し、対米輸出減を通じ日本経済にも多大な悪影響を及ぼす」(野村ホールディングスの渡部賢一社長)とみられるためだ。米国経済については、過半数が〇九年に〇八年比で一%以上のマイナス成長を予想している。
 外需の停滞は輸出企業を中心に国内企業の収益に打撃となりそうだ。〇九年度に見込まれる連結ベースの上場企業の減益幅は回答者の平均で約一〇%。スズキの鈴木修会長兼社長は「輸出の急減速に伴い生産量は減少し、設備投資も抑制され企業の収益も悪化する」と指摘する。
 収益減に伴って設備投資の落ち込みが見込まれるほか、「雇用や賃金情勢の悪化から個人消費も落ち込む」(三菱重工業の大宮英明社長)可能性も高い。
 雇用調整は〇九年度に本格化するとの見通しが多く、回答者が予想する〇九年十二月末時点の完全失業率(平均値)は四・七%と〇八年十一月時点(三・九%)を大きく上回る水準。賃上げ率の予想値は回答した十五人の平均で一%弱にとどまり、雇用、所得の先行き不安から家計部門が一段と萎縮する恐れもある。
 ただ「世界規模の調整局面は続くが、日本経済のダメージは比較的軽微」(セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長)との声もある。キリンホールディングスの加藤壹康社長は「米国の新政権下での経済回復状況や国内の景気対策次第」との条件付きながら、〇九年度の成長率を〇八年度比横ばいとした。
 景気の下支え要因として注目されているのは、中国など新興市場国の動向。損害保険ジャパンの佐藤正敏社長は「中国の回復が早ければ日本経済を下支えする」と指摘する。中国経済の〇九年の成長率予想は平均で六―八%台に集中。中国の七―九月期の実質成長率は前年同期比九・〇%と十一・四半期ぶりに一ケタ台に落ちたが、日米欧に比べると景気減速は緩やかとの見方が多い。
 個人消費の落ち込みや国際商品価格の下落を背景に、〇八年半ばまで騰勢を強めていた物価は上昇が一服しそうだ。全国消費者物価指数(CPI)の予想は前年度比の平均で〇・二%下落。十五人が物価は下落方向にあると予想した。
 円相場は一ドル=九〇―一〇〇円との予想が大勢。昨年十二月には約十三年ぶりの九〇円を突破する円高を記録したが、これはやや行き過ぎた動きと見ているようだ。ただ相場の変動幅が大きかった〇八年後半を引き継ぎ、振れ幅の大きい一年を予想する声が多い。
 麻生太郎内閣に対してはすでに打ち出した景気対策にとどまらず、さらなる景気下支えを求める注文が相次ぐ。「短期的には大胆な景気刺激策が必要」(日本郵船の宮原耕治社長)、「最も影響を受ける中小企業と地方に対する対策が最優先」(JTBの田川博己社長)との声が上がった。半面、「将来不安を解消する社会保障制度改革など国の将来を見据えた方向性を示すことが重要」(三井不動産の岩沙弘道社長)との指摘もある。
 世界経済が停滞する現状への対処として、三菱商事の小島順彦社長は「チャンスととらえて自由な貿易・投資体制を確立すべく積極的な外交を行うべきだ」という。


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