20090103 日本経済新聞 朝刊

 二〇〇九年の日本経済は実質国内総生産(GDP)が米欧とともにマイナス成長に陥り、回復の糸口を見つけにくい状況が続きそうだ。民間エコノミスト十五人に予測を聞いたところ、景気後退が深く長くなるとの見方が大勢を占めた。金融危機による世界同時不況で昨秋以降、輸出と生産が急激に落ち込み、雇用調整が消費不振を招きつつある。本格回復は一〇年にずれ込む見通しだ。
 〇八―〇九年度の予測の平均値は、物価変動の影響を除いた実質GDPの伸び率で〇八年度のマイナス一・〇%に続き、〇九年度はマイナス〇・九%となる。十五人のうち十四人が、山一証券など大手金融機関の破綻やアジア通貨危機が起こった一九九七―九八年度以来の二年連続のマイナス成長を予想している。
 悲観的な見方が多いのは、未曽有の金融危機の影響が終息するめどがたちにくいためだ。世界同時不況で、頼みの綱である輸出はほぼ全地域向けで減少基調になり、生産の急減を招いて企業収益を圧迫。工場の新設や設備の増設も見送りが相次ぎ、〇九年度の設備投資は前年割れが確実だ。
■デフレ再燃の懸念
 さらに企業部門の不振が雇用の減少を通じて家計に波及する公算が大きい。横ばい圏内にあった個人消費も減少する可能性がある。資源価格の反落に需要減が加わり、〇九年度の消費者物価指数(生鮮食品を除く)の予測平均はマイナス〇・五%と「デフレ再燃」を示す数字になった。
 実質成長率予測の平均値(年率換算)を四半期ごとにみると、一―三月期がマイナス一・八%で四―六月期(同〇・三%)、七―九月期(同〇・四%)とマイナスが続き、十―十二月期にプラス〇・六%。平均的な景気の底打ち予想は秋になる。しかし一%台半ばとされる潜在成長率並みの成長は見込めず、本格回復は一〇年以降になる。
 三菱UFJ証券景気循環研究所の嶋中雄二氏は「世界規模で景気刺激策が出動される」ことから景気が後退から拡張に転じる「谷」を〇九年三月と予想する。しかし早期回復シナリオは一人だけで、大勢の予想は「〇九年九月」(三人)と「一〇年三月」(四人)に集中している。
■後退の速さ際だつ
 戦後の景気後退期間は平均十六カ月で、エコノミストが予測する今回の後退期間は平均約二十六カ月。後退が〇七年末ごろから始まったとすると、抜け出すのは一〇年初めだ。最も先の脱出を予測する野村証券金融経済研究所の木内登英氏は「一〇年十一月」で後退期間は三十六カ月となり、戦後最長に並ぶ。
 一年前には多くのエコノミストが〇九年まで緩やかな景気回復が続くとみていた。急降下を予想できなかった理由を聞いたところ、回答の第一位は金融市場の悪化。「米政府が大手投資銀行を破綻させた」(日興シティグループ証券の村嶋帰一氏)など、市場の失敗に「政府の失敗」が加わった要因が挙がった。
 今回の不況に名前を付けてもらうと、後退スピードの速さを強調した命名が目立った。日本経済研究センターの竹内淳一郎氏とニッセイ基礎研究所の櫨浩一氏は「バンジージャンプ不況」。高所から一気に落ちた後、元の高さには戻らないイメージだ。「平成世界同時不況」(BNPパリバ証券の河野龍太郎氏)など世界的な不況の広がりを重視した命名も多い。
 アンケートの回答者は以下の通り(五十音順)
 菅野雅明氏(JPモルガン証券)、木内登英氏(野村証券金融経済研究所)、熊谷亮丸氏(大和総研)、河野龍太郎氏(BNPパリバ証券)、小玉祐一氏(明治安田生命保険)、後藤康雄氏(三菱総合研究所)、嶋中雄二氏(三菱UFJ証券景気循環研究所)、新家義貴氏(第一生命経済研究所)、竹内淳一郎氏(日本経済研究センター)、櫨浩一氏(ニッセイ基礎研究所)、藤井英彦氏(日本総合研究所)、南武志氏(農林中金総合研究所)、村嶋帰一氏(日興シティグループ証券)、森実潤也氏(富国生命保険)、山本康雄氏(みずほ総合研究所)


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