20081219 日本経済新聞 夕刊

 十八日の米株式相場は大幅続落。債券相場は六日続伸し、十年債利回りは一時二・〇三%まで急低下した。
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 米財務省が金融安定化法の財源を使い、国民に低利の住宅ローンを貸し出すとの観測が市場で話題になっている。報道では三十年の金利が年四・五%前後とされ、回復の兆しの見えない住宅市場を活性化する切り札になるとの見方がある。
 十八日、ハーバード大のマンキュー教授が自身のブログでこのアイデアに対する賛否両論を紹介した。
 賛成派はコロンビア大のグレン・ハバード教授。低利ローンの需要喚起効果は絶大で「二〇〇九年に二百四十万件の新規需要を作り出す」との試算を公表。下落の止まらない住宅価格を支えるとみる。
 さらに既存ローンの借り換えも認めれば三千四百万世帯が利用。計千七百四十億ドルのローン支払いを軽減し、この分が消費に回る。市場に出回っている大量の住宅ローン担保証券(RMBS)の繰り上げ償還が生じ、金融機関の不良資産処理も進むと評価する。
 一方、ハーバード大のグレイザー教授は懐疑的だ。「歴史的に住宅価格とローン金利の関係は弱く、価格を五%上昇させるにすぎない」と批判。新ローンの焦げ付きが発生すれば、ローンを証券化する住宅金融公社は税金で保護されるので、結局、ツケは国民に回ると主張している。
 住宅市場の崩落は金融機関の財務を痛め、家計の消費を冷え込ませるすべての元凶。政府による借り手支援でこれを改善しようとする試みはこれまでもあった。
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 だが、米住宅都市開発省が現在進める借り換え支援プロジェクト「ホープナウ」は、当初四十万人の借り手を差し押さえから救うと目されたものの、開始から二カ月で三百人の利用者しかない。金融機関への債権放棄の要請や、書類の申請手続きが非常に煩雑なことが理由という。
 自由落下のごとく下げ続ける住宅価格に対して有効な政策は何か。専門家の間でも意見の割れるこの難問に取り組む米政府は、行き先の見えない「海図なき航海」に乗り出している。
(ニューヨーク =財満大介)


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