20081212 日本経済新聞 朝刊

たばこ増税見送り 代替策にも難題
 与党がたばこ増税の見送りを決めたことで、二〇〇九年度予算編成で社会保障費の伸びを二千二百億円抑制する政府方針が暗礁に乗り上げた。麻生太郎首相は十一日、たばこ税に代わる「新たな財源」の確保を与党に指示。政府・与党内では来年度から一般財源化する道路特定財源の一部を充てる構想や、特別会計の積立金を充てる案などが浮上しているが、調整は難航必至だ。(1面参照)
 たばこ税の引き上げが政府内で急浮上したのは先月末。麻生首相が抑制方針の見直しを示唆したことを踏まえ、財務省などが増税分を原資とみなすことで、実際の抑制額を一千億円程度圧縮する検討に着手した。しかし総選挙を控えた与党内には増税への慎重論が強く、自民党税制調査会は十一日、来年度の引き上げを見送ることにした。
 これを受け麻生首相は同日夕、自民党の保利耕輔政調会長を首相官邸に呼び、「新たな財源の確保のため、責任を持って対応してもらいたい」と指示した。河村建夫官房長官はその後の記者会見で「首相は二千二百億円の削減は限界との認識を持っている」と指摘。歳出を削るのではなく、新たな財源を確保することで抑制額を穴埋めする策が検討の軸になるとの見通しを示した。
 与党内では、道路特定財源の一部を回す案が取りざたされている。ただ道路整備費を削ろうとすれば、道路族が反発するのは必至とみられる。
 十兆円強ある財政投融資特別会計の積立金の活用を唱える声もある。しかし概算要求基準では、穴埋めの前提を「新たな安定財源が確保された場合」に限定している。「埋蔵金」はいったん取り崩せばそれきりで、財務省は「安定財源と呼ぶにはほど遠い」(幹部)との立場だ。
 財務省は歳出の抑制をなお模索する。千六百億円にのぼる雇用保険への国庫負担削減を求めるが、厚生労働省は「雇用情勢が悪化し、労使の賛同が得られない。法案を作っても与党が反対する」(幹部)と反発。今年度予算に引き続き後発医薬品の利用促進も検討するが、削減効果は数百億円どまりだ。
 二千二百億円の抑制方針はすでに事実上、破綻している。今年度は旧政府管掌健康保険への国庫負担を大企業の健康保険組合に肩代わりさせることで一千億円余りを削減する予定だったが、そのための特例法案はこの臨時国会で廃案となることが決まったからだ。政府・与党内では、抑制方針そのものの撤回を求める声もくすぶっている。


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