20081211 日本経済新聞 朝刊

行革相と厚労相合意
 甘利明行政改革担当相と舛添要一厚生労働相は十日、厚労省所管の独立行政法人、雇用・能力開発機構の存廃問題を巡って会談し、同省所管の別の独法、高齢・障害者雇用支援機構と統合させることで合意した。統合する機能は職業訓練業務に絞り、統合後の新独法の運営に労使代表らが参加する。数のうえでは独法が一つ減ることになるが、具体的な業務の効率化がどこまで進むかは不透明だ。
 行革相は厚労相との会談後、二法人の統合案について「年内に閣議決定したい。職員はスリム化する」と述べ、存廃問題が決着したとの認識を強調した。自らが二つの独法の統合案を提案したことも明らかにした。統合時期は今後詰める。
「妥協案」で決着
 雇用・能力開発機構を巡り、政府は年内に存廃の結論を出すとしていた。政府の行政減量・効率化有識者会議(座長・茂木友三郎キッコーマン会長)が九月に機構の廃止・解体を打ち出した一方、厚労省は雇用政策に国が責任を持つためにも国の組織として存続させる必要があると主張。厚労省は業務を縮小し、職業訓練に特化させる案を示したが、両者の隔たりは大きかった。
 行革相の提案は、同機構を廃止するという基本線は守りつつ、厚労省の主張通りに国の関与は残すという、いわば「妥協案」。厚労相は行革相案をほぼ丸のみし、厚労省が引き続き関与するという「実」をとった。
 雇用・能力開発機構を公益法人など国の別の組織に衣替えし、厚労省と経済産業省の共管とする案も浮上していた。だが結局は雇用・能力開発機構の業務を中小製造業の競争力強化に役立ちそうな職業訓練に絞り、高齢・障害者雇用支援機構と統合。統合後の新独法の運営に中小企業の代表らを参画させて、意見を反映しやすい仕組みとする方向で落ち着いた。
 独法改革は行政組織を縮小し、効率のよい「小さな政府」の実現が狙い。今回の合意により、形式的には雇用・能力開発機構はなくなる。しかしどれだけリストラが進むかは不透明さが残る。
 例えば雇用・能力開発機構の傘下にある全国約六十カ所の職業訓練施設について、行革相と厚労相は「都道府県の希望があれば運営を移管する」としただけ。全国に十カ所ある高度なものづくりの技術を教える「職業能力開発大学校」も、国の運営が事実上続く公算だ。
しごと館は廃止
 職業訓練の指導員を養成する「職業能力開発総合大学校」は「今後、役割を評価し、あり方を検討する」との合意にとどまった。一方、「私のしごと館」は廃止し、早期売却をめざす。
 統合先となる高齢・障害者雇用支援機構は、職業訓練機能で雇用・能力開発機構と重複する部分もあるが、相乗効果は未知数だ。統合までに具体的な合理化策を進めなければ「看板の掛け替え」で終わる恐れもある。
 ▼雇用・能力開発機構 二〇〇四年三月に独立行政法人化し、職員数は約四千人。雇用保険の約一千億円を財源に、失業者の再就職のための職業訓練や訓練指導員の養成をしている。職業訓練などのほか、中高生の職業体験や職業情報を提供する「私のしごと館」なども手掛けている。
 全国に約六十カ所ある職業訓練施設については、都道府県や民間へ移管するなどの効率的な組織運営を求める声が出ていた。私のしごと館には、巨額の赤字を垂れ流しているとの批判が相次いでいた。
 ▼高齢・障害者雇用支援機構 二〇〇三年十月に独立行政法人化し、職員数は約七百人。高齢者や障害者を雇用しようとする事業主向けに相談・支援事業をするほか、障害者の職業訓練などの就職支援を実施。高齢者の雇用状況を把握する調査研究などもしている。



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