20081208 日本経済新聞 朝刊

 「大損するから商品にだけは手をだすな」というのは商品投資に対して昔から根強く残るイメージだ。だが、商品は株式などと異なった値動きをすることもあり、運用を安定させるためにポートフォリオに組み込むことも有効とされる。足元の市場混乱の中で、個人投資家に適した商品投資とはどのようなものか。
 まずは本当に商品投資が運用を安定させるのか。百万円を元手とする二〇〇三年からのシミュレーションをみてみよう。
 Aは株だけで運用したグラフで、日経平均株価に連動する投信に元本百万円をすべて投じる。Bでは株式と商品に分散投資する。日経平均連動型投信で五十万円を、残り二十五万円ずつを商品指数投資の代表的な指標となっているS&P・GSCI(一九六九年末=一〇〇)連動型投資信託と、金地金の現物投資に振り向ける。
 二〇〇三年初から運用を始めたとして、Aでは〇七年半ばに資産が二百十万円強まで上昇したが、景気悪化によって、足元では元本を一割弱下回ってしまった。
 一方、Bでは最高値はAに及ばなかったが、最近でも元本に対し、一割強のプラスを保つ。株式より変動幅も小さく、より安定した運用になっていると言える。「商品投資に手を出すな」というのは必ずしも当たっていないようだ。
 それでは現在、個人が投資できる商品はどんなものか。ここでは商品の中でも長期運用に向いているとされ、冒頭のシミュレーションのポートフォリオに組み入れた現物投資や商品指数連動型投信を取り上げる。
 金地金などの現物は最もシンプルな商品投資だ。個人は原油を保有するタンクやトウモロコシを搬入する倉庫などを持たない。そのため、現物投資できるのは実際には金や白金などの貴金属だけで、地金商や商品先物取引会社などから買うことができる。
 現物投資で注意したいのは販売価格と買い取り価格の差。個人が地金を買う価格は地金商などが個人から買い取る価格より高く設定されている。つまり運用は必ずその差の分だけマイナスから始まり、短期売買には向かないとされる。
 金の値動きは株式に逆行するケースが少なくない。例えば、今回の金融危機を受けて株式が急落した場面では、安全資産として注目され、金に投資資金が流れ込んだ。
 金相場は米リーマン・ブラザーズが経営破綻した九月中旬以降上昇し、破綻前に比べ一時約二割高となった。その後調整したが、足元も九月とほぼ同水準を保つ。日経平均株価は破綻以降三五%の下げを記録した。
 シミュレーションAよりBの成績が良かったのは、金の地金を組み込むかどうかが大きな差となって表れた。
 「商品版の投資信託」と位置付けられるのがコモディティー投信だ。代表的な指数連動型投信は、原油や金、穀物などの総合的な値動きに価格が連動する。個別の商品に投資するより、分散投資効果が得られて価格が安定するとされる。
 ただ、これらの投信は資産の裏付けとして指数連動型の債券(リンク債)を組み込んでいるタイプが多い。リンク債は信用リスクが生じる場合がある。アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)の経営不安が浮上した際に、同社グループ発行のリンク債の価値が算出不能となり、投信も一時新規販売や中途解約が停止された。
 株式同様に、商品相場は「二〇一〇年初めまで低迷が続く」(ドイツ銀行商品調査部グローバルヘッドのマイケル・ルイス氏)との指摘もある。短期的な急回復は期待できなさそうだが、こんな時こそ、それぞれが持つ利点とリスクを理解したうえで、じっくりと商品を選ぶチャンスかもしれない。(湯田昌之)
 商品業界出身のファイナンシャルプランナー(FP)、三次理加氏 商品投資の際には二パターンに区分して投資すると良い。一つは安全資産としての投資。資産がゼロになるリスクがない金現物などが向く。
 もう一つは積極的に利益を上げるための投資。貴金属や穀物などバランスよく投資したい場合にはファンド投資がいいだろう。購入時には直近だけでなく、長期的な運用成績をみて選ぶことが望ましい。
 もし先物に投資するなら、少額にとどめ、現金を確保しておくと、あとあと安心だ。プロの商品ファンドマネジャーでも先物投資は一定割合に抑えているのを見習いたい。
 次回は「金融商品 深掘りチェック」を掲載します。


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