20081204 日本経済新聞 名古屋朝刊

還元セールでも節約志向
 師走に入り、世界を覆う金融危機や円高の進行が、中部地方の外国人留学生や観光地に暗い影を落とし始めている。留学生は生活に悲鳴を上げ、観光地の宿泊施設では年末以降の予約の出足が鈍く、今後の影響を懸念する。一方、円高還元セールで輸入品の値下げが相次ぐ中、財布のひもを引き締める消費者には、歓迎とあきらめムードが漂う。
 「生活への余裕が無くなってきた」。名古屋市港区の韓国出身の留学生、趙宗熙さん(25)はため息をついた。
 今春から一年間、愛知県内の大学でデザインを専攻。日本での生活費は、実家からの毎月百万ウォンの仕送りで賄う。九月ごろまでは円換算で約十万円。寮の入居費や食費などを賄い、自由に使えるお金は一万―二万円という生活だった。しかし急激なウォン安で現在では六万三千円程度まで“目減り”。
 趙さんはスーパーで特売品を選ぶ節約生活を続け、十一月からは韓国料理店でアルバイトを始め、不足分を補う。「働かないと生活できず、大学の課題制作の時間が削られてつらい」と漏らす。前倒しで帰国した友人もいるという。
 中部三県の大学・専門学校などには約七千九百人の外国人留学生が通う。約三百人を抱える南山大学(名古屋市)では留学生向けの奨学金申請は現在、前年比二割近く増加。円高による生活苦が理由の例が目立つ。アルバイトの許可申請数も二割程度増え、「この状況が続けば支援策も検討しなければならない」(同大)。
「戻るまで我慢」
 中部地方の観光地は最近、海外の旅行客に人気だったが、「宿泊予約に影響が出始めた」。飛騨の小京都といわれる岐阜県高山市。飛騨高山旅館ホテル協同組合理事長を務める「ひだホテルプラザ」の社長、堀泰則さん(60)は嘆く。
 例年、年末から三月は台湾を中心としたアジア客のピークで、約二割が外国人宿泊客だ。堀さんは「円高が二割進めば、宿泊客は二割減る」と予測。年末年始の国内客の予約は例年より増えており、「円安になれば、(海外からの)客足は戻ってくる。それまで我慢するしか」と話した。
 同市では海外からの宿泊数は昨年度約十三万人。二年前に比べ約四万人増だ。「今後、影響が出てくるかもしれず、先行きが不安」(市観光課)
「値下げ続いて」
 大手スーパー「ジャスコ熱田店」(名古屋市)では十月以降、輸入食品を値下げ。一部の輸入牛肉が半額に下がり、ワインも二割ほど安い。
 「思わず、(輸入品を)買い込んでしまいたくなる」と話すのは、同市熱田区の主婦、藤永純子さん(40)。食料品の高騰が続いた一年前に比べ、一回の買い物では三百円程度の出費が減ったといい、「このまま値下げが続いてほしい」と訴えた。
 輸入牛肉を購入した同区のパート女性(55)も「ありがたい」と喜んだ。ただ、家計は厳しく、週二回の買い物を一回に。「まとめ買いで節約を心がけている」と話した。
 名古屋市内の大手百貨店でも十月から円高還元セールを実施。高級輸入ブランド品が並ぶ。愛知県常滑市の男性会社員(50)は高級腕時計を眺め、「今は貯金。買うのは我慢する」と悔しそう。飲食店の女性経営者(52)は「今、買った方がいいと思うが……。思い切って買えない」と高級バッグを棚に戻した。


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