20081203 日本経済新聞 朝刊

 自民党が各省庁からの予算要求額に枠をはめるシーリング見直しを首相に求めた二日、財務省内には「年内の予算編成ができなくなる」(幹部)と緊張が走った。
 同省は二十日に同省原案を内示し、二十四日に予算政府案を閣議決定する日程を想定する。ここにきてシーリングのタガが外れれば、選挙をにらむ与党から「ばらまき圧力」が噴き出し、収拾がつかなくなる懸念があるからだ。
 ただ、米国発の金融危機を機に財務省も財政再建ばかりに重点を置くわけにはいかなくなりつつある。
 金融危機を受け主要国は積極的な景気刺激策の導入で足並みをそろえている。米国は七十七兆円の追加金融対策を発表。欧州連合(EU)も付加価値税の引き下げや自動車業界への支援策に向けた具体的な検討に入っている。
 財政赤字を国内総生産(GDP)比三%以内に抑え、社会保障など各分野の歳出上限枠(キャップ)を定めた一九九七年成立の財政構造改革法の例もある。橋本内閣は九八年度予算で緊縮予算を組んだが、九七年四月の消費税率引き上げに金融不安が追い打ちをかける格好で景気は腰折れ。結局、同法は次の小渕政権で凍結に追い込まれた。
 財務省内に「予算編成時になんらかの工夫が必要だ」(幹部)との意見が出始めているのはそのためだ。社会保障費の伸びを二千二百億円抑制する方針は、たばこ増税を原資として抑制幅の圧縮を検討。公共事業費は三千三百億円の重要課題推進枠を活用する案などを検討する見通しだ。本予算ではシーリングを堅持し補正予算で上積みを認める案も取りざたされる。
 景気を見据えた柔軟な財政対応は必要とはいえ、先進国で最悪規模の債務残高を抱える台所事情も考慮しなければならない。中期的な財政再建シナリオをどう描き直すのかの課題は残る。


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