20081202 日経産業新聞

ストック重視に転換へ
(1面参照)
 景気低迷で逆風下にある住宅業界。近い将来、住宅業界がさらに直面するのが世帯数減少の問題だ。戦後増加の一途をたどってきた世帯数は二〇一五年には減少に転じるとされ、市場拡大の方程式の前提が崩れる可能性が指摘されている。「二〇一五年問題」を前に住宅各社は戦略の転換を迫られている。解決のカギは「ストック」の活用だ。
 野村総合研究所は一一年から一五年までの五カ年平均の新設住宅着工戸数が、約九十万戸になると予測している。これはピークである一九七二年度(百八十五万六千戸)の半分、改正建築基準法の影響で新設住宅着工戸数が大きく落ち込んだ〇七年度(百三万六千戸)と比べても、約一割減の水準だ。
 「新設着工戸数は総世帯数の相関関係が強い」(野村総合研究所)。その世帯数の伸びは一〇年から一五年までに約三十万戸と、八五年から九〇年までの増加数(約二百七十万)から大きく後退する見通し。〇三年に四千七百二十六万だった世帯数は、一五年の五千六十万をピークに減少に転じるとされ、一五年以降の新設住宅着工戸数も減少傾向が続くとの声が強い。
 実はストックベースの住宅戸数は四十年前に世帯数と逆転。六八年に国が実施した調査によると、住宅戸数二千五百五十九万に対し、世帯数は二千五百三十二万となり、戦後初めて住宅戸数が世帯数を上回った。その後、常に住宅戸数が世帯数を上回る状態が続き、〇三年時点では、空き家が六百五十万戸を超えている。
 それでも新設着工戸数は増え、八〇年代後半には百六十万―百七十万戸で推移する時代が続いた。世帯数の増加を背景に「より広く、より質の高い住宅」を求める消費者のニーズが続いたためだ。
 しかし、世帯数が減り始め、新設着工戸数の右肩上がりの増加は望めなくなる。住宅業界では「ストックを重視したビジネスモデルへの節目」(旭化成ホームズの岡本利明顧問)の時を迎えたとの認識が広がっている。住宅を新規に供給するより、ストックから派生するビジネスを重視。具体的には中古住宅の売買や建て替え需要で収益を確保する戦略だ。
 積水ハウスや旭化成ホームズなど戸建て住宅メーカー大手九社は七月、中古戸建て住宅の売買推進を目指した「優良ストック住宅推進協議会」を設立。中古物件を査定する際の独自基準を設定すると同時に、査定を担う人材育成に共同で乗り出した。政府も耐久性に優れる住宅に対する税制優遇策などで後押しする。
 十月の新設住宅着工戸数は前年同月比では二〇%近い伸びとなったが、これは昨年の需要減の反動が出た影響で、足元の需要も回復感に乏しい。各社は「棟数を追うより利益の出る体制を構築する」(住友林業の矢野龍社長)と、縮む市場にコスト削減などで足場を固める姿勢を強めている。
 目先の需要減だけでなく中長期的にも市場の成長が期待できない構造問題を抱えているだけに、ストックを生かした具体的な成長のシナリオをどう描くのか、手腕が問われている。


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