20081201 日本経済新聞 夕刊

 きょう一日から師走。景気後退の足音が高くなるなか、家計や小売店に厳しい冬が到来している。「年末が乗り切れるかどうか」。企業の人員削減の影響で、職業安定所には“年越し”の不安を訴える人が次々と訪れた。ボーナス商戦を迎えた百貨店や家電量販店に足を運ぶ消費者の財布のひもは固い。
 東京都豊島区の「ハローワーク池袋」には、仕事を求める人が早朝から訪れた。
 生後三カ月の子どもを抱きながら求人情報を眺めていた板橋区の女性(33)は夫が印刷業を経営。「この不景気でいつ仕事がなくなるか分からない。年末が乗り切れるかどうか……」と仕事を探しに来た。育児費用がかさむ分、日々の食費を切り詰めているといい、「今年はお節料理も作らない」ときっぱり。
 失業保険の申請に来た新宿区の男性(60)は「年金だけでは妻との生活を支えられない」と三カ月間、仕事を探しているが、三十社に応募していずれも音さたがない。「アルバイトでもしないと年を越せないよ」
 二十三年間勤めた建築資材会社が十月末に廃業して職を失ったという板橋区の男性(54)は「事務系の仕事を希望しているが、五十歳を超える年齢では条件に合う求人がまったくない。しばらくは退職金と八十九歳の母親の年金でしのぐしかない」と話した。
●商戦底冷え
 ボーナス商戦が始まった東京・秋葉原の電気街のにぎわいはいまひとつ。秋葉原電気街振興会の事務局の男性(60)は「店によって差がある」としながらも「六月の無差別殺傷事件以降、歩行者天国もないし、円高の影響もあり外国人の集客も望めない」と声を落とす。
 「景気の悪化でボーナス商戦に向けての意気込みも途絶えがち」と顔をしかめるのは、秋葉原で約十五年パソコン専門店を経営している男性(63)。「ぎりぎりまで利幅を削って売値を下げているけど、昨年に比べ利益は半減」といい、「年末に向けて財布のひもが緩むのを期待したいけど、現実は厳しい」と話す。
 買い物に来た千代田区の主婦(67)は「テレビやパソコンを買い替えたいが景気が不透明。高額商品を買うのは控えてしまう」と漏らした。
 東京・日本橋の百貨店の歳暮品売り場。午前十時の開店直後から中高年を中心に客の姿が目立ち始めた。文京区の主婦(55)は「(夫の)ボーナスがこの冬はだいぶ厳しそうだけど、お歳暮は一年の感謝だから削るわけにはいかないし……」と悩ましげだった。

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