20081129 日本経済新聞 朝刊

 政府は二十八日、二〇〇九年度の社会保障費の伸びを二千二百億円抑制する方針について、たばこ税の引き上げを原資に抑制額を一千億円程度圧縮する検討に入った。残る千二百億円は雇用保険への国庫負担削減などでまかない、医療や介護サービスの削減に直接結びつかないようにする。たばこ税は一本当たり三円(一箱二十本で六十円)の引き上げが軸。景気悪化への配慮から抑制目標を事実上見直すものだが、政府案通り調整が進むかは流動的だ。(社会保障費は3面「きょうのことば」参照)
 二千二百億円の社会保障国庫負担の縮減を巡っては、麻生太郎首相が有権者からの反発が強まっていることなどから二十七日に抑制方針の見直しを示唆。首相指示を踏まえ、財務省は概算要求基準の範囲内で抑制額を減らす検討に着手した。
 具体的には間接喫煙による健康被害への悪影響が指摘されているたばこへの課税強化で一千億円程度を捻出(ねんしゅつ)する。厚生労働省もたばこ増税で生じた財源を目標達成に回すよう求めていた。今後、自民党税制調査会でも議論が本格化するが、慎重論も根強い。
 財務省の試算によると、一本当たり一円引き上げると国の増収分は約五百億円で、三円上げなら千五百億円。ただ値上げで売り上げが減るため、実質的な国の増収分は約一千億円にとどまるとみられる。
 たばこ増税でまかなえない千二百億円分については、毎年千六百億円に上っている雇用保険への国庫負担を削ることで対応する方向だ。国の雇用保険制度では失業給付などに備えた積立金が五兆円近くに上る。財務省は国庫負担を大幅に縮減しても、ただちに財政上の問題は生じないとみる。
 来年度予算の概算要求基準によると、少子高齢化の影響から年金や医療費の自然増分だけで八千七百億円に上る見通しだ。政府は小泉政権下で設定された財政再建目標に沿って、この自然増を二千二百億円圧縮する方針を打ち出してきた。
 しかし医師不足問題などで医療費の抑制がやり玉に挙がり、歳出改革を続けることへの慎重論が強まっている。
 政府は仮に概算要求基準そのものを撤廃すれば、財政規律が失われて批判が強まりかねないと判断。概算要求基準はこれまで通り堅持したうえで、社会保障費の抑制幅を大幅に小さくすることで、総選挙を控えた与党側にも配慮する格好だ。
 同基準には「新たな安定財源」を確保した場合に、社会保障経費の上限額を見直せる規定がある。厚労省や与党の一部はこの規定を踏まえ、たばこ税の引き上げ分で抑制額を穴埋めする案を主張していた。
 もっともたばこの業界団体などは増税に猛反発しており、政府・与党内の調整は曲折が予想される。雇用保険の国庫負担削減を巡っても、厚労省が「景気後退で雇用保険財政が悪化する」と反対姿勢を示しており、財務省との綱引きが激しくなりそうだ。

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