20081126 日本経済新聞 朝刊
FRB資産劣化の懸念も
【ニューヨーク=財満大介】米連邦準備理事会(FRB)が二十五日発表した新たな金融対策は、住宅ローンやクレジットカードなど個人の生活に直接かかわるお金の流れを改善させる狙いがある。米国内総生産(GDP)の七割を占める個人消費の下支えに照準を合わせた格好だ。ただ、あらゆる資産を引き受けるFRBの資産劣化は避けられず、ドルの信認低下につながる恐れもある。(1面参照)
米国では住宅ローン、クレジットカード、自動車ローンなどの分野で専門の金融機関が大きな役割を占める。これらの専門会社は銀行と違い、預金という貸し出し原資を持たない。このため貸し出したローン債権を裏付けとする証券を発行。投資家に販売して日々の事業資金を調達している。
これらの証券は一般に資産担保証券(ABS)と呼ばれ、住宅ローン債権を裏付けとする場合は特に住宅ローン担保証券(MBS)と呼ばれる。だが金融危機の影響でABSの流通市場はほぼマヒ状態に陥った。ABSを発行できないカード会社が与信枠を絞りこんだ結果、個人が買い物を控えるなど、消費行動に影響が出ている。
FRBの新制度は、投資家や金融機関が市場で売却できずに抱え込んでいたABSを買い取り、金融機関に資金を供給する。資金繰りが改善した金融機関が再びお金を貸し出すことで、個人消費のテコ入れにつなげる狙いだ。同日記者会見したポールソン財務長官は「新制度は米国民の毎日の資金繰りを支援する目的だ」と強調した。
仮に自動車ローン会社の資金繰りが改善すれば、自動車販売が回復し、不振を極める自動車大手三社(ビッグスリー)の経営再建を支援する効果も見込める。ABSは米景気全体の回復につながる重要な市場だけに、FRBは大規模な対策が不可欠と判断した。
FRBは政策金利を一%に引き下げて銀行の積極貸し出しを促しているが、不良資産の処理が終わらない銀行が融資を渋るため、金融システムの機能がなかなか回復しない。結果として「最後の貸し手」としてのFRBがあらゆる資産を買い入れ、さまざまな市場に直接お金を行き渡らせるという構図がいちだんと鮮明になっている。
今回の制度導入でFRBは新たに、最大八千億ドルの資産を抱え込む。一連の金融危機対応で導入した流動性供給策などでFRBの資産は既に二兆ドルを超えており、一段と資産は膨らむ。FRBの財務悪化は結局、国債発行などで埋め合わせなければならず、そのツケは基軸通貨であるドルの信認低下という形で回ってくる。
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