20081123 日本経済新聞 朝刊

 住宅ローンの借入先の銀行に預金すると、ローン利息の支払額を減らせる――。一部の第二地方銀行や外国銀行などが販売する「預金連動型住宅ローン」と呼ばれる商品で、ローンと預金を一体として取り扱うのが特徴だ。どんな人に向いているのか、試算をもとに検証した。
 表Aに主な預金連動型住宅ローンの概要を掲げた。各商品には表の記述以外にも相違点があり、詳細は確認する必要があるが、まずは東京スター銀行の商品で仕組みを把握しよう。
借入金利は高め
 ローン残高から普通預金残高を差し引いた額が、利息支払額の計算の基となる実質的なローン残高になるのが基本的な設計だ。預金が繰り上げ返済と同じ効果を持ち、利息の支払額が減る。(1)普通預金なので原則いつでも引き出せる(2)ローン残高が減るわけではないので、住宅ローン減税(年末のローン残高の一定割合を税額から差し引く措置)の効果が出やすい――などの利点がある。
 注意点もある。高めの借入金利や、団体信用生命保険(団信=借り手の死亡時などに返済を肩代わりする保険)の保険料が支払利息に含まれる通常型住宅ローンと違い別途必要なこと、利息軽減に使う部分の円普通預金に金利が付かないことなどだ。
 では、通常型の住宅ローンと比べて有利なのか。利用者の手元資金額の多寡に応じてケース別に試算した(表B)。あくまで利息支払額、団信保険料とローン減税額だけをもとに負担額をはじいた簡略計算だ。
 試算の前提として、東京スターでは自宅購入費(三千万円)の二割に当たる頭金を手元資金で手当てし、残りを同行から借りることにする。手元資金の残りは普通預金に預け、利息支払いの軽減に活用する。返済が進むとローン残高が普通預金を下回るようになる。預金のうちローン残高を上回った分には金利が付くし、その部分を引き出して別途運用することも可能だが、試算では考慮しなかった。
 一方、メガバンクの通常型ローン利用時には、いざという時のため、四百万円を購入費用に充てずに銀行に預け、残った手元資金を頭金に充てて足りない分を借りることにする。預金金利は普通、定期とも今は低いのでゼロと仮定した。
資産運用機会逸失も
 結果を見ると、ケースAでは東京スターが有利。資金の余裕度が相対的に低いケースBとCでは、通常型ローンが得だった。政府・与党は住宅ローン減税を二〇〇九年から大幅拡充する方向で調整中で、実現すればケースBでも東京スターが有利になる可能性がある。ただ、ローン減税は一定の納税額がないと利点を享受できない。
 表Bの試算から言えそうなのは、借入残高を多めにしてローン減税の利点を享受する一方で、豊富な預金で利息軽減効果を出すという組み合わせが、預金連動型ローンの上手な使い方ということだ。つまり、資金に余裕がある人が有利になる。ちなみに愛媛、北日本、関西アーバンの各行は、親など家族の預金も利息支払額の軽減に活用できる(表A)。
 試算には注意点がある。ケースA(手元資金が二千万円)で通常型ローンより預金連動型ローンが有利としたが、通常型が有利になるやり方もあることだ。借入額を増やすことで手元に残すお金を増やし、その分を定期預金、株式、投資信託などで運用する方法だ。
 金利や株価の上昇で高い運用成果が望めるなら、この方法が有利になり、預金連動型は使わない方がいいかもしれない。「預金連動型で手元のお金をローン残高の相殺のために塩漬けにするより、通常型を借りて手元資金を運用に回す方が得な可能性もある」(ファイナンシャルプランナーの浅田里花さん)
 以上の試算結果をまとめると、預金連動型が向いているのは表Cの三つの条件を満たすひとだと言えそうだ。利用に当たっては自らの収入や相場環境などを十分勘案したうえで判断しよう。(編集委員 清水功哉)



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