20081119 日経産業新聞

プロの心得、50週で800問解く
 「例えパートタイムで働く主婦でも、お客様にとってはプロでなければならない」――。生命保険大手のアメリカンファミリー生命保険(アフラック)で社員教育を担当する個人アソシエイツサポート部の松永大輔さんは、保険商品を直接顧客に販売する代理店の社員教育制度を全面的に刷新した。これまでの座学中心の研修に代えて導入したのはeラーニング(インターネットを使った遠隔教育)。二〇〇六年夏から構想を練ってきたシステムは十月に本格稼働を始めた。
 全国に六百店舗あるアフラックの認定販売代理店「サービスショップ」の社員が対象。企業向け教育システム開発大手のウィルソン・ラーニングワールドワイドが構築した。ソフトの期間貸し(ASP)形式で、ウィルソン・ラーニングのデータセンターでシステムを運用し、全国の店舗やアフラックの本社にインターネットを通じて配信する。
 システムは教材と学習者の割り付け、学習の進ちょく状況の管理を一元化するLCMS(ラーニングコンテンツマネジメントシステム)を基盤に構築した。一年半かけてアフラック専用のコンテンツを作成。商品を購入しない人の分析などを盛り込んだ消費者心理学など、独自の試験項目を作り上げた。
 システムにはIDとパスワードさえ確認できれば、どのパソコンからも接続できる。週に一度、試験問題を配信。五十週にわたって八百問以上を解く仕組みで、一問でも間違っていれば「修了」できない。同じ問題を複数回繰り返すときには選択肢の順番が代わるなど、答えの番号を覚えて正解するような不正がないように設計した。
 システム導入の狙いは販売力強化とコンプライアンス(法令順守)の徹底。同じ商品を売っているのに店舗や接客する社員によって説明が違えば、企業としての信頼を失うことにもなりかねない。顧客の顔を見て販売する代理店社員だからこそ、サービスを均一化する必要があった。
 教育内容は商品知識や販売方法のほか、関連する法律や医学にまで及ぶ。サービスショップが抱える顧客数は千四百万件。来店する顧客は新規顧客だけでなく、すでに保険契約をしている人も含まれる。時には現在販売中の商品だけでなく、十数年前まで販売していた商品の説明責任も負う。がん保険などの加入者からは最新の治療法など、医学的知識の提供を求められることも少なくない。
 新システムでは、代理店の社員一人ひとりの学習の進ちょく状況を本社側で管理する。一〇年三月末までに全学習工程を修了した社員がいない代理店とは認定代理店の契約を解除する方針で、eラーニングを義務化することで教育の徹底を図る。新システムの導入で、代理店社員の東京での研修に費やしていた宿泊費や交通費などのコストを削減する効果も得られた。
 対象社員は約三千人という大規模システム。導入には約二億円を投資した。保険金の不払い問題や告知義務違反など、問題の相次いだ保険業界で「確かな信頼を勝ち取るには必要な投資だった」(松永さん)という。アフラックという企業と消費者をつなぐ窓口になる代理店の販売社員の教育システムを通じて、顧客との信頼関係構築を図っている。
(岡田真知子)

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