20081117 日本経済新聞 大阪夕刊

 お好み焼き、たこ焼きなどの「粉もん」は関西を代表する庶民の味。その粉もんの消費が最近、家庭でさらに増えているようだ。スーパーなどの店頭では粉の販売が急伸。味付けに欠かせないソースの売れ行きも上昇している。金融危機や景気悪化で財布のヒモを締めざるを得ない中、比較的安く手軽に作れる粉もんが再評価されている。
 スーパー、ライフコーポレーションの近畿の店では、三―十月のお好み焼き粉の売上高が前年同期比で二〇%増えた。兵庫県内を中心に展開する中堅スーパーのトーホーでもほぼ同様の伸び。ほかの多くのスーパーも、一昨年の売り上げデータとの比較はできないとしているものの、「最近、売り上げ増が目立っている」というところが多い。
 ライフコーポの西本信吾チーフバイヤーは、食の安心への関心が高まっているのが一因と指摘する。「お好み焼きなら、材料を確かめながら焼ける。それが受けたのでは」というわけ。同社の店頭では国際的な小麦高を映して、お好み焼き粉の価格を昨年より十円高い二百六十八円に値上げしたが、販売の落ち込みはないという。
 一方、味の決め手となるソースの売れ行きも順調に伸びている。ライフの場合、三―十月の売り上げは粉と同様に前年同期比で二〇%増。トッピングに使う刻みのりやかつお節などの売れ行きも前年を上回っているスーパーが少なくない。
 ソースメーカーのオリバーソース(神戸市)は二〇〇八年九月期の売上高が前期より一二%増。道満雅彦社長は「夏にガソリン高が続いたこともあり、遠出をせず自宅で食事をした家庭が多かったことも寄与した」とみる。
 総務省の家計調査(〇七年)によると、近畿六府県の県庁所在市では、神戸、大津を除く四市で一世帯当たりのソースの年間購入額が前年比八・三―三四・八%と大幅増。大阪市は七百三十一円で、〇五年以来、三年連続で伸びた。粉もんの本家を争う広島市が〇七年に前の年より九・八%減ったのとは対照的だ。
 大阪府和泉市に住む主婦(65)は「子どもが独立して夫婦二人になったが、お好み焼きだと気軽に食べられる」という。神戸市の派遣社員の女性(27)は「お好み焼きは一品だけしか調理しなくて済むから楽。ガス代も余計にかからない」と話す。月一回程度だったお好み焼きの頻度は二度くらいに増えたという。
 粉もん人気の余波は調理器具にも。大阪・ミナミの道具屋筋で厨房(ちゅうぼう)用品店を営む津山英敏さん(56)は「最近、素人の客がお好み焼きの道具を買っていく。先日も一台三十万円もする専用テーブルが売れた」と驚いた様子で話す。
 以前は客の大半が自ら店を経営するプロだったが、最近は一般の人が半数を占める。ソースを塗る「はけ」や、お好み焼きを裏返す「てこ」などを買い求める人が多いという。
 関西の消費者の動向に詳しい博報堂生活総合研究所の夏山明美上席研究員(44)は「不景気で、生活者に節約志向が強まっている」と指摘。家庭で粉もん消費が伸びているのは「材料費が安く家計を圧迫しないうえ、野菜中心で健康や美容にもいい。手間も少なく、家庭で食卓が囲めて楽しいからでは」とみている。
 もっとも、粉もん需要の拡大は家庭にとどまっている。外食店からは「際立って売り上げが増えた実感はない」(お好み焼きチェーンの千房)との声も。実際、近畿のお好み焼き店の数は減少傾向が続いており、粉もんチェーン十社でつくる「上方お好み焼たこ焼協同組合」の宮原寿夫理事長は「家庭での人気を店にも呼び込みたい」と話す。
(神戸支社 小山隆司)




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