20081029 日本経済新聞 朝刊

クーポンなど配布 事務負担・効果に問題も
 追加経済対策の目玉として政府・与党が検討中の総額二兆円の定額減税で、クーポン券や現金を直接配る給付金方式が急浮上してきた。二十八日開いた自民・公明両党の政策責任者の協議で、自民が提案した。給付金方式は一九九八年度に実施した地域振興券と同様、納税額の少ない人にも一定額を確実に配れるのが特徴。家計の消費を刺激しようと狙った策だが、ばらまき型の政策であるうえ、実際に配る市町村の事務負担や効果の点で問題も多い。
低所得者も恩恵
 給付金方式は低所得者にも恩恵が行き届くのが最大の特徴だ。所得税の課税最低限度額は夫婦・子ども二人の世帯で年収三百二十五万円、個人住民税は同二百七十万円。これを下回る所得の場合は収入に対する税金がかかっていないので、減税になってもメリットがない。給付金で配るなら対象者に一律で行き渡る。
 給付金は通常の減税に比べ、比較的早く実施できる面もある。政府・与党は早期に景気にてこ入れするため年度内に実施できる対策を目指している。しかし所得税や個人住民税から一定額を差し引く減税にした場合、手続きに時間がかかる。所得税減税は関連法の国会成立後、早ければ二月から源泉徴収額を減らす形になるが、個人住民税は各市町村が税金を再計算する必要があるため「基本的には来年六月からになる」(総務省)。
 ねじれ国会の影響で減税関連法案を提出しても成立が遅れる恐れがある。給付金を配布する方式なら「予算措置さえとればよく、法案も必要ない」(政府関係者)といい、給付金はこの点でも迅速に実行できる。
 バブル崩壊後の景気低迷期には、九八年十一月の経済対策で「地域振興券」を配った例がある。総額七千億円で対象者は十五歳以下の子どもがいる家族の世帯主か老齢福祉年金の受給者などで、交付額は子どもや高齢者一人当たり二万円。市町村が実施主体になった。与党は二十七日、当時携わった関係者から配り方などの聞き取りをした。
ばらまきの懸念
 政府内には買い物にしか使えないクーポン券方式とすれば、「貯蓄に回る可能性の大きい定額減税より効果的」という期待がある。だが実際の効果は未知数。地域振興券のケースでも、旧経済企画庁の調査によると交付額の三割程度しか消費に使われず、六割強は貯蓄に回った。日本経済新聞社が当時実施したアンケートでは、交付世帯の七割強が「生活の助けになる」と答えた一方、五割近くが「税金の無駄遣いで、やるべきではなかった」とも感じていた。
 実務面の課題も多い。地域振興券の際は住民基本台帳を持つ市町村が配布にあたった。各自治体は該当者の名簿を作成、偽造できない券をつくって厳重に保管するといった対応に追われた。当時を知る総務省幹部は「今回は対象者も増えるので給付金になった場合、どれくらいの作業が必要か見当がつかない」と指摘している。




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