20081029 日本経済新聞 朝刊

 二十六年ぶりの安値水準を付けた日経平均株価。独歩高の様相を強める円相場――。金融市場の混乱が実体経済を下押しする懸念が強まっているが、ちょっと見方を変えればどうか。異常相場の裏側に潜む「好材料」を探ってみた。
 三カ月余りで半値弱になった原油の国際相場。この間、円高・ドル安が進んだ結果、輸入価格は円換算だと、わずか三分の一にまで落ち込んでいる。実に三年五カ月ぶりの安値水準だ。
 いまの原油の国際相場は、中東産代表種のドバイ原油で一バレル五五ドル強。一年八カ月ぶりの安値だ。円建てにすると一バレル五千二百十四円。最近のピークは七月初旬で一万四千八百円。下げ幅が六五%と大きいのは、円がこの間、一ドル=一〇七円から九四円に上がったため。世界全体でみると日本が最も原油相場下落の恩恵を享受している。
 今後は為替や原油の相場が変わらなくても、実際の仕入れ価格がさらに下がる可能性もある。原油を運ぶ大型タンカーの運賃が七月以降に急落。スポット運賃指数が七月の三分の一にまで下がったからだ。
 これらはガソリンの国内店頭価格に波及する。石油情報センターによると、レギュラーガソリンの全国平均価格は二十日時点で一リットル百五十七・四円。最も高かった八月初めから一五%安くなっているが、まだまだ下がる可能性が大きい。
 昨年の原油輸入量は二億四千万キロリットル。ドバイ原油が七月上旬の相場だった場合、輸入額は年二十二兆二千億円だが、いまの価格なら七兆八千億円で済む。原油を使う企業にとってコスト削減効果が大きい。
 日本経済新聞デジタルメディアの総合経済データバンク「NEEDS」の試算によると、十月以降に原油価格が一バレル六〇ドルで推移すれば、八〇ドルの場合に比べて〇八年度の企業収益を一・四%押し上げるという。
 家計もこの恩恵を受ける。経済産業省によると、仮にいまのガソリン価格の水準が続けば、八月の最高値が続いたケースに比べ、家計の負担は一世帯当たり年間約二万円軽くなるという。寒冷地で車の保有率も高い北海道では、三万九千円の負担減になる計算だ。
 とはいえ、かぎを握るのは、安くなった仕入れ価格が本当に末端まで反映されるかどうかだ。明治安田生命保険の小玉祐一氏は「多くの企業は需要冷え込みを恐れて相場上昇時の価格転嫁を最小限に抑えてきた。その反動で値下げペースが遅くなる可能性が高い」と懸念する。(随時掲載)



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