20081026 日本経済新聞 朝刊

 世界的な金融危機をきっかけにしたマネーの激流は先週、日本の為替・株式市場を直撃した。円相場は一週間で対ドルで七円強も急騰、日経平均株価は一〇〇〇円を超す下げとなり、二〇〇三年につけたバブル崩壊後の安値に迫った。円高と株安の負の共振に歯止めがかかるのか。週明けの市場も波乱含みだ。(1面参照)
 世界全体の株式時価総額が急減している。前週末は三十一兆ドル(約三千兆円)となり、昨年十月末のピークに比べて半減した。一年間で約三千兆円が目減りした。世界景気が予想を上回るスピードで悪化するとの懸念からマネーの株式離れに拍車がかかっており、先進国から新興国まで株安が加速している。急激な株価の下落が消費や投資の減少を通じて実体経済を一段と冷え込ませる可能性が強まっている。
 時価総額は各市場に上場する企業の株式数に株価を掛け合わせた金額の総計。国際取引所連盟(WFE)によると、世界の株式時価総額のピークは昨年十月の六十三兆五百億ドル。金融危機の表面化でその後は減少が続き、八月末で四十九兆六百億ドルと二割強減った。米モルガン・スタンレーの算出する世界株指数を使って推計すると、二十四日現在は三十一兆ドルに減ったもよう。
 月間の減少額は七、八月は二兆ドルだったが、九月は七兆ドル、十月は十一兆ドルと加速。ピークからの減少額の三十二兆ドルは世界の名目国内総生産(GDP)の六割強に相当。日本の個人金融資産の二倍が世界で吹き飛んだ計算になる。ヨルダンなどごく一部を除いて、一年前に比べて株価が上昇している市場が見あたらない異例の事態だ。
 主要市場の騰落率をみると、ロシアが七五%も急落。株安が止まらず取引を一時停止した。中国やアルゼンチンも六割超下落している。日本も日経平均は半値以下。今年前半まで堅調だったカナダや南アフリカも資源価格下落の影響で低迷している。ここにきて欧州の下げがきつく、金融危機の震源地である米国の下落率を上回っている。東欧や中南米では株価が一年前の三分の一になったところが相次いでいる。
 株価下落は「家計の金融資産の含み損が『逆資産効果』となり、消費者心理を悪化させる」(大和総研)。株安に歯止めがかからなければ消費の落ち込みや企業の設備投資抑制で実体経済が悪化、さらなる株安を招く悪循環に陥る懸念もある。

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