20080930 日本経済新聞 朝刊
民主党を挑発するかのような「逆質問」とは対照的に、後期高齢者医療制度や税制抜本改革などで首相は具体的な方向性を示さなかった。目前に迫る衆院選をにらみ、防戦に回らざるを得ない政策の争点化を回避したい思惑がのぞく。
自民党総裁選中に「抜本的見直し」に言及した後期高齢者医療制度について首相は所信表明演説で「制度を無くせば解決するものではない」と微妙に修正。「一年をメドに必要な見直しの検討」とした。税制改革では消費税率上げには触れず、膨らむ社会保障費の財源に関し「検討を急ぐ」とするにとどまった。道路特定財源の一般財源化も具体論に踏み込む姿勢は見えなかった。
首相サイドは道路特定財源の一般財源化について「閣議決定しており、自明のこと」と説明。社会保障分野も含め、質問を受ければ論戦に応じると言うが、景気対策などに比べ位置づけの違いは明らかだ。
例えば年金、医療。世論の反発を招いた後期高齢者医療制度は野党がそろって廃止を主張。制度見直しは議論が始まったばかりで、論戦になれば政府・与党の歯切れの悪さばかりが目立つ展開も予想される。不手際が続く年金問題も、与党内には、深入りすれば民主党を利するだけとの警戒感がくすぶる。
消費税率上げや道路特定財源の一般財源化では、年末の税制改正論議など与党内調整を経ずに踏み込めば「独断専行」との批判を浴びる。
景気対策など分かりやすい分野で民主党との対立軸をつくり、形勢不利な政策課題はあいまい答弁で切り抜ける――。所信表明での首相の姿勢は、与党の選挙戦術とつながる面もありそうだ。
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