20081003 日本経済新聞 朝刊

実現はハードル高く
 政府は基礎年金の国庫負担割合を来年四月から二分の一に引き上げる財源として、将来の償還財源をあらかじめ明確にした「つなぎ国債」を発行する検討に入った。国庫負担を引き上げるには増税など「安定財源」の確保が必要になる。年末の税制改正で消費税やたばこ税などの増税に向けた工程表を示したうえで、増税実施までの財源をつなぎ国債でまかなう計画だが、最近の政治・経済情勢の下で増税を決められるかは不透明だ。
 基礎年金の国庫負担引き上げには毎年度二・三兆円が必要。麻生太郎首相は当初予定通り来年四月の引き上げ方針を示しているが、現段階で安定財源のメドはない。首相は二日の参院本会議での代表質問で「道筋を明確にすべく、年末までに結論を得たい」と語った。
 とはいえ兆円単位をまかなえる手段は限られている。消費税なら一%分が二・五兆円に当たる。政府内にはたばこ増税への期待もあるが、税率を倍にしても二兆円には届かないとの見方が強く、財務省内では「たばこ税を安定財源とはいい難い」との意見もある。
 同省が想定する有力候補は消費税だ。ただ首相は三年間は消費税率は引き上げない方針を表明している。仮に二〇一一年に増税するケースを想定すると、二年間分の四・六兆円を穴埋めする財源の確保が課題となる。中川昭一財務相は「赤字国債はなるべく出さない」意向を示しており、償還財源が明確なつなぎ国債案が選択肢として浮上した。
 つなぎ国債の発行は増税の実施を法律レベルで担保することが前提となる。ただ景気低迷で税収が落ち込むなかで増税を打ち出すハードルは高い。財務省には早期に増税までの道筋を付けたい思いが強い。つなぎ国債の構想には国債による資金調達と将来の増税を「一体で決めてほしい」との思惑もくすぶるが、衆院解散・総選挙が想定されるなかで、年末に増税への工程表が描けるかは不透明だ。
 少なくとも与党がマニフェスト(政権公約)で財源確保のために増税が不可避であることを明記するなどの対応を打ち出さなければ、つなぎ国債案は頓挫しかねない。政府・与党内には特別会計の積立金などいわゆる「埋蔵金」の活用を求める声があるものの、財務省は否定的。余った分の積立金は国債償還に回すことを法律で定めており、社会保障費などの歳出に回すことはできないと主張している。増税の道筋が描けなければ、赤字国債による資金調達や国庫負担の引き上げの先送りなどに追い込まれる可能性もある。
 ▼つなぎ国債 将来の償還財源を明確にしたうえで発行する国債。償還財源を確保するまで資金繰りを「つなぐ」という意味。赤字国債の一種だが、財務省は「将来世代にツケを先送りする一般的な赤字国債とは区別できる」との見解を示している。償還期間も通常より短く設定する。
 一九九四年に実施した所得税減税では、三年後の消費税率引き上げを担保に、つなぎ国債を発行する特例法を成立させた。似た例では、湾岸戦争の多国籍軍支援で九十億ドルを調達するために発行した臨時特別公債がある。

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