20081005 日本経済新聞 朝刊

 米保険最大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が日本の生命保険三社の売却方針を決めたことで、国内生保業界の勢力図が塗り替わる可能性がでてきた。中でも業界五位の保険料収入を持つアリコジャパンの行方は、日本生命保険など四大生保を中心とした体制を揺るがす。売却先として国内のほか海外大手勢の名前が浮かぶ。米金融危機が日本の生保業界再編の引き金を引く。
 AIGが売却を決めたのはAIGエジソン生命保険、AIGスター生命保険、アリコジャパンを含む米アリコ。関係者によると三社の売却先候補として、国内では東京海上ホールディングスや日本生命保険など、海外では独アリアンツや仏アクサ、英プルーデンシャル、米プルデンシャルなどの世界大手の名前が挙がっている。
 【アリコの通販魅力】売却対象の三社で最も関心が高いのがアリコの行方だ。アリコジャパンの二〇〇八年三月期の保険料収入は一兆四千億円で業界五位。仮に六位以下の準大手生保がアリコを手に入れれば、一気に四位の住友生命にほぼ並ぶ勢力になる。戦後から続く四大生保体制が大きく揺らぐ。
 アリコは四大生保にとっても魅力がある。アリコは代理店網やテレビコマーシャルを使った通信販売、銀行窓販など多彩な販売チャネルが強みだ。「生保レディー」による販売が主体の四大生保とは顧客層が異なる。
 通販で売るシンプルな医療保険や、銀行窓口で得る年金商品を扱う場合、第一生命保険や富国生命保険のように、本体とは別の専業の子会社を持つ方が、機動的に商品開発できる利点がある。
 日生などこうした子会社を持たない大手生保がアリコを手に入れれば、「商品開発と販売網の両面で相乗効果が出る」(大手生保)。国内販売は軒並み停滞しているが、状況を打開する突破口にもなりそうだ。
 【スター・エジソンの契約健全】一方、AIGスター生命保険とAIGエジソン生命保険は来年一月に合併する予定で、両社まとめて売却される可能性がある。国内にしっかりした足場のない海外の大手にとっては、格好の買い物といえそうだ。
 両社ともかつて経営破綻した中堅生保がもとだが、破綻時に不採算の契約を切ったため保有契約は健全とされる。AIGの傘下とはいえ、職員のほとんどは日本人。両社合わせ九千人近い営業職員を抱えており、“居抜き”で日本市場の販売シェアをとれることになる。
 仮に世界大手のアリアンツやアクサが買収に成功すれば、国内市場での海外勢の存在感が一段と高まる可能性もある。
 ただいずれのケースでもネックとなるのが買収額だ。アリコだけで一兆円、エジソン、スターも合わせて数千億円規模とみられる。
 しかもAIG側は株式交換などではなく現金による売却を求めるとされており、買収には相当な資金力が必要だ。「国内勢では厳しい。世界でも手を出せるのは数社」(国内大手幹部)との見方もある。
 破綻寸前まで追い込まれたAIGの資産内容や、資本関係が入り組んだ組織形態への不信感も根強い。買収に向けては「精緻(せいち)な資産内容の調査が不可欠」(国内損保幹部)との見方が一般的。買収相手が決まるまでには紆余曲折(うよきょくせつ)がありそうだ。


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